わし)” の例文
伊尸耆利山いしきりさんで法敵に襲われ、石子責めに逢って殺された、目蓮尊者に比べてはこの身の殉教は数にも入らぬ。わしはお前達に礼を云う。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この隠居が椽端えんばた近く歩み出て、今や掻堀を面白半分に騒ぎ立つ家来共を制して、もうもうそれには及びませぬ、ことの仔細はわしう知っていますと云うから
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
重右衛門は、わしの遠い親類筋だで、それでかう言ふのではごんせぬが、何アに、あれでもうまくさへ育てれや、こんな悪党にやりや仕ないんだす。一体祖父様ぢゝさまが悪かつただす。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ヂュリ 内實なかみの十ぶん思想しさうは、言葉ことばはなかざるにはおよばぬ。かぞへらるゝ身代しんだいまづしいのぢゃ。わしこひは、分量ぶんりゃうおほきう/\なったゆゑに、いまその半分はんぶんをも計算かんぢゃうすることが出來できぬわいの。
わし、お祭りさ行くツて云ふのに、お母どうしたべ——本當に。」
防雪林 (旧字旧仮名) / 小林多喜二(著)
仏陀ほとけの教えこそ讃美ほむべきかな。それは隠遁いんとんの教えではない。勇往邁進ゆうおうまいしん建設の教えだ。禁慾の教え、克己の教えだ。……わしはすぐに殺されよう。妾はすぐに火炙ひあぶりに成ろう。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ろくでなしの和郎わろめが!……(ロミオに對ひて)もし/\、貴下こなたさまえ、最前さいぜんまうしましたが、わしひいさまが、貴下こなたさがしていとの吩咐いひつけでな、その仔細わけあとにして、うてくことがござります
「何を申す怪しい女子! かく申すこのわしこそ秋篠局のお末頭、其許そもじのようなお末は知らぬ」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「……呪詛のろわれておれ窩人の一味! お前には安穏あんのんはあるまいぞよ! お前は永久死ぬことは出来ぬ! お前は永久年を取らぬ! 水狐族の呪詛のろいわしの呪詛! 味わえよ味わえよ味わえよ!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昨夜ゆうべの夢見が悪かったからだよ。それでわしは泣いているのだよ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)