奇貨きか)” の例文
きに奇貨きかとし重んじたるの敵国の人物をもくして不臣不忠ふしんふちゅうとなえ、これを擯斥ひんせきして近づけざるのみか、時としては殺戮さつりくすることさえすくなからず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
級長の立花君は特待生という都合上、自分一人い子になりたがって、これを奇貨きかとする傾向がある。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
処女の身にやどる巫呪ふじゅの力にたいする信仰が、まだほとんど上代のままの生き生きした姿を保つてゐるのを奇貨きかとして、その信仰のかげにできるだけわが身を韜晦とうかいしてみよう
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
その脳裏に徹底する所の感情は大いに儂らのために奇貨きかなるなからん、この期失うべからずと、即ち新たに策を立て、決死の壮士をえらび、先ず朝鮮に至り事を挙げしむるにかずと
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
奇貨きかくべし、とはそのさいの御心中ではなかったか。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以テ彼ノ大学企図ノ大業ニ従フヲ以テ我畢生ひっせいノ任トナシ其任ヲ遂グルヲ以テ我無上の娯楽トナスノ外あえテ富貴ヲ望ムニ非ズ今ヤコノ書ノ発刊ニ臨ミテ之ヲ奇貨きかトシ又何ゾみだリニ巧言こうげんろうシテ世ヲあざむキ以テ名ヲもとメ利ヲ射ルノ陋醜ろうしゅうヲ為サンヤ敢テ所思ヲ告白シテ是ヲ序ト為ス
一時の奇貨きかも永日の正貨せいかに変化し、旧幕府の旧風をだっして新政府の新貴顕きけんり、愉快ゆかいに世を渡りて、かつてあやしむ者なきこそ古来未曾有みぞう奇相きそうなれ。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
騒擾そうじょうの際に敵味方相対あいたいし、その敵の中に謀臣ぼうしんありて平和の説をとなえ、たとい弐心ふたごころいだかざるも味方に利するところあれば、その時にはこれを奇貨きかとしてひそかにその人を厚遇こうぐうすれども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)