塵紙ちりがみ)” の例文
懐中ふところから塵紙ちりがみして四つにつて揚子箸やうじばし手探てさぐりで、うくもちはさんで塵紙ちりがみうへせてせがれ幸之助かうのすけへ渡して自分も一つ取つて、乞
お雪は笑いながら、懐紙ふところがみを出してくれました。まことにありきたりの塵紙ちりがみですが、新助の死体の下にあった浅草紙とは違います。
その上に琉球唐紙からかみのような下等の紙を用い、興に乗ずれば塵紙ちりがみにでも浅草紙にでも反古ほごの裏にでも竹の皮にでもおりふたにでも何にでも描いた。
ついでにその蛍をつかまえて、———手を這われると気味が悪いので、塵紙ちりがみを円めてそうっと包んで、———雨戸の無双窓の隙間すきまから外へ放したが、見ると
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
使いかけの赤、黒のインク壺、硯、その他塵紙ちりがみや古雑誌のゴタゴタしている真中に、黒く足跡のついた上草履が、誰かのいたずらで、きっちり並べられてある。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
塵紙ちりがみを二つに切って置いて使ったり、用事を葉書で済ますために、顕微鏡がなくては読まれぬような字を書いたりするのは、どの人にも共通している性質だろうが
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
客の喰べ残した料理の皿でタバコをみ消したり、ルージュの付いた塵紙ちりがみを突込んだり、マッチの棒、爪楊枝、はなをかんだ紙、その他もろもろの物品を投げ入れる癖がある。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お作のうちは、その町のかなり大きな荒物屋であった。なべおけ、瀬戸物、シャボン、塵紙ちりがみ草履ぞうりといった物をコテコテとならべて、老舗しにせと見えて、くろずんだ太い柱がツルツルと光っていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その草は毒草で根もやはり毒です。その根は白い色で繊維せんいが沢山ある。その繊維でもって紙を製造します。紙質は随分強いが真っ白な紙はない。少し黒くって日本の塵紙ちりがみのようなものである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そう云って、塵紙ちりがみにこまかく包んだ金を松田さんは私の帯の間にはさんでくれている。私は肩上げのとってない昔風な羽織を気にしながら、妙にてれくさくなってふりほどいて電車に乗ってしまった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
三畳の隅っこに、蜜柑箱みかんばこが一つ、行灯あんどんが一つ、蜜柑箱は机の代りになるらしく、その上に硯箱すずりばこが置いてあって、箱の中には、手習をした塵紙ちりがみが二十枚ばかり重ねてあります。
彼は船で使う草履や、塵紙ちりがみ、鉛筆、雑記帳などを買うとか、また、ときたま食事をしに寄る程度だし、そんな場合にもおさいに話しかけるのはおろか、眼をあげて顔を見ることさえなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
三疊の隅つこに、蜜柑箱が一つ、行燈あんどんが一つ、蜜柑箱は机の代りになるらしく、その上に硯箱すゞりばこが置いてあつて、箱の中には、手習をした塵紙ちりがみが二十枚ばかり重ねてあります。
彼は船で使う草履や、塵紙ちりがみ、鉛筆、雑記帳などを買うとか、また、ときたま食事をしに寄る程度だし、そんな場合にもおさいに話しかけるのはおろか、をあげて顔を見ることさえなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まことにあり來りの塵紙ちりがみですが、新助の死體の下にあつた淺草紙とは違ひます。
三尺の押入を開けると、上は夜の物、下は竹行李たけがうりが一つ、ふたをあけると、中から着換が二三枚と、新しい手拭と三尺と、塵紙ちりがみが少々、それに小錢の少し入つた財布さいふと、紙の包が一つあります。