あっ)” の例文
その人は次官であるから随分身分のある人で、その人の親類が長州にあって、これに手紙をやった所が、その手紙を不意ふいと探偵に取られた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かく山に生じているものはその花が余り派手やかではないが、諸州にあって里に栽えられてあるものにはすこぶる美花をらくのがある。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
瓢然ひょうぜんたる一種の道楽息子と成果てつ、家にあっては父母を養うの資力なく、世にたっては父母をあらわすの名声なし、思えば我は実に不幸の子なりき。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
のみならずもし妻がこの秘密を知ったならどうしようとうちあってはそれがまた苦労の一で、妻の顔を見ても、感付てはいまいかとその眼色を読む。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
早晩予も形体は無きに至るも、一双の霊魂は永く斗満の地上にあって、其さかんなるを見てたのしまん事を祈る。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
専門の学者にあっては活用し得ざる智識また必要ならんも、普通教育に於てはしからず、世間往々学者の常識欠乏せるを言う。実際学問のために常識を弱めらることがあろう。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この家は以前もと土蔵をこわした跡へたてたのだが、土蔵のあった頃当時の住居人すまいにんそれ女房にょうぼが、良人おっとに非常なる逆待ぎゃくたいを受け、嬰児こどもを抱いたまま棟木むなぎに首をつって、非命の最期を遂げた、その恨みが残ったと見えて
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
小藩でも大家たいけの子だから如何どう我儘わがままだ。もう一つは私の目的は原書を読むにあって、蘭学医の家に通うたり和蘭通詞つうじの家に行ったりして一意専心いちいせんしん原書を学ぶ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そこで全き心をささげて恋の火中に投ずるに至るのである。かかる場合にあっては恋則ち男子の生命である
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それゆえその左右より巻きたる巻き葉にあっては葉脈は左右必ず同数で、その脈に両側とも相対して居り、すなわちその左右には各十条ばかりの葉脈があって下面に隆起して居りますが
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
又その家に十八、九の倅があっ独息子ひとりむすこ、余りエライ少年でない、けれども本は読まなければならぬと云うので、ソコでその倅に漢書を教えてらなければならぬ。是れが仕事の一つ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)