四方八方よもやま)” の例文
綺麗きれいつくつてからかへると、つま不図ふと茶道具ちやだうぐともなかとをわたしそばはこんで、れいしとやかに、落着おちついたふうで、ちやなどれて、四方八方よもやまはなしはじめる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
平次は用意の束脩そくしゅうを二人分、お盆を借りて差出し、その日は四方八方よもやまの話だけで帰りました。戸口を出るともう
一文貰ひに乞食が来ても甲張り声に酷く謝絶りなどしけるが、或日源太が不在るすのところへ心易き医者道益といふ饒舌坊主遊びに来りて、四方八方よもやまの話の末
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
すゝむる物から親子ともに下戸げこなればとて手にだもふれ詮方せんかたなければ一個ひとりにて傾けながら四方八方よもやまはなしの中に容子ようす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
るとき使節がアムストルダムにいって地方の紳士紳商に面会、四方八方よもやまの話のついでに、使節のとい
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こう考えると、この親方もなかなかにも、詩にもなる男だから、とうに帰るべきところを、わざとしりえて四方八方よもやまの話をしていた。ところへ暖簾のれんすべって小さな坊主頭が
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくてこの日の裁判も終ったので、裁判官は一同休憩室に入って、四方八方よもやまの話にふけった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
こころ昂奮たかぶりが一おうしずまってから、私達わたくしたちあいだには四方八方よもやま物語ものがたりひとしきりはずみました。——
その時にお八代さんは唯一人でお霊屋たまやの掃除をされるついでに、この方丈に立ち寄られて、茶を飲まれましたが、四方八方よもやまのお話の序に……まだちっと早いようじゃけれど、来年の春
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
始めは何気ない四方八方よもやまのお話を遊ばしていらしたのですが、軈て印度で飼い馴らしたという恐しい毒のある黒蛇の籠を出してお見せになり、これを放すと直ぐ人の首筋に噛みつくの
蛇性の執念 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
そのあとで茶をれて四方八方よもやまの話から、幽霊の有無ありなしの話をしましたが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仕つりぬ只今たゞいま藥研やげんに掛ますあひだ霎時しばらくお待ち下されと云つゝ夫を和吉に遞與わたし製造せいざう方へ廻させしは多少をろんぜぬ商個あきうどの是ぞ實に招牌かんばんなるさて細末さいまつの出來る間と元益に四方八方よもやまの話しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ある日源太が不在るすのところへ心易き医者道益どうえきという饒舌おしゃべり坊主遊びに来たりて、四方八方よもやまの話の末、ある人に連れられてこのあいだ蓬莱屋へまいりましたが、お伝という女からききました一分始終
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
せぬかと申に彼町人は得たりかしこしと夫は有難し直樣すぐさま御間おあひ仕つらんと是より後藤のそばよりさしさゝれ飮合のみあひいが其好む所にへきすとの如く後藤半四郎は自分が酒好さけずきゆゑつひに此男と合口となりて忽ち互ひに打解うちとけつゝ四方八方よもやまの物語りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)