善根ぜんこん)” の例文
父は善根ぜんこんの深い人で、四国、西国の霊場を経巡へめぐ遍路へんろの人達のために構えの一棟を開放し善根の宿に当てていた。
抱茗荷の説 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
美女たをやめにもうれしげに……たのまれてひとすくふ、善根ぜんこん功徳くどく仕遂しとげたごと微笑ほゝゑみながら、左右さいうに、雪枝ゆきえ老爺ぢいとを艶麗あでやかて、すゞしいひとみ目配めくばせした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うませいよいよさかえ行けるに母のお勝も大いに安堵あんどし常に念佛ねんぶつまい道場だうぢやうに遊びき庄兵衞が菩提ぼだいとむら慈悲じひ善根ぜんこんを事としたれば九十餘さい長壽ちやうじゆたも大往生だいわうじやう素懷そくわい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
試験! それは生徒に取って地獄じごくの苦しみである、もし平素善根ぜんこんを積んだものが死んで極楽にゆけるものなら、平素勉強をしているものは試験こそ極楽の関門である
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
なさけも善根ぜんこんも銘々の力にあたうかぎりで済ませればよし、程を過ぎたらかえって身のわざわいになる。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
泰文はよほどの善根ぜんこんでもほどこしている気でいるらしく、いつもニコニコと上機嫌だったが、だんだん図に乗って、たぶん邪悪な興味から、裸の花世を葵ノ壺へ連れて行き
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「なアお絃、おめえもつくづく嬉しい気性だなあ。こうやって自分達は、野良犬みてえにのきの下に夜を明かしても、好いた同士の首尾しゅびを計ってやる。これは善根ぜんこんというものだ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
川地は大口開いてカラ/\と笑ひつ「吾妻、貴様もエライ善根ぜんこんがあるんだナ、感心だよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そこで暦を見るに、彼岸は春二月のせつより十一日目にいり七日の間を彼岸という、昼夜とも長短なく、さむからず、あつからざる故時正じしょうといえり。彼岸仏参し、施しをなし、善根ぜんこんをすべしとある。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
文燁ぶんよう善根ぜんこんを積んでいる。そのような善人に禍いをかけてはなるまい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善根ぜんこんを積んだと云う気がするだろう?」
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
汝等なんぢら天に訴へ祈り呪咀じゆそすること道理もつともなれども彼が三世の其以前そのいぜんは義長こと法師にて五部の大藏經を書寫かきうつし此國を治めたり善根ぜんこん今生こんじやうむくい來て當國を知行することを得る因てしばらく其罪を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「育ててやれ。よい善根ぜんこんだ。——それになかなかよい子ではないか」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほどこ慈悲じひ善根ぜんこん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)