前様まえさん)” の例文
旧字:前樣
いいも終らざるに婦人おんなは答えぬ。「あれかい、あれは私の宿六——てッちゃあお前様まえさんに解るまい。くわしくえば亭主のことさ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仏壇ほとけさまにお前様まえさん親父様おとッつぁま位牌いはいを小さくして飾って有ります、新光院しんこういん様と云って其の戒名だけ覚えて居ります、其の位牌を持って往って下さい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ああえらい、お前様まえさんは男だから力があるよ。負けました負けました。おほほほほほ、強い人だね。」と平気で笑えば、吉造少しく拍子抜ひょうしぬけ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前様まえさんが仔細を話して下さらんうちは私は何時いつまでもうちへは帰りません生涯でもお前さんのそばにいなければなりません、左様そうじゃアありませんか
また僕も苛められるようなものになったんだ、全くのこッた、僕はこんな所にお前様まえさんほどの女が居ようとは思わなんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前様まえさんもそう云って他人の私を子か何かのように親切にして下さいやして、誠に有難いと思い、其の時の御恩は死んでも忘れやせん、わっちゃアこれから東京へけえったが
と抱起さんとすれば、鉄蔵慌てて身を起し、「ええ、勿体ねえ。お前様まえさんわっち身体からだけがれておりやす。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何処でもい身柄の処へ縁付けば結構だとわしもお前様まえさんの事は陰ながら噂をしていたので、処が計らず釣に出て真堀の岸へ吹き上げられ、定蓮寺の床の下へ棺桶をうずめるのを見て
前様まえさんと、御新造様ごしんぞさんと一ツお床でおよったからって、別に仔細はないように、ま私は思います。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
棺桶の中に灯火あかりが点いてありますからいぶかしいと思ってわたしが出したので、実に訳の分らん始末、それに今お前様まえさんがどうしても操を立てなければならん圖書に済まんと云うばかりでは
年紀としは若し、お前様まえさんわし真赤まっかになった、手に汲んだ川の水を飲みかねて猶予ためらっているとね。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勘「何卒どうかお前に逢ってねえ、一言ひとこと此の事を云って死にてえと思って心に掛けて居たがねえ、お前様まえさんは、小日向服部坂上で三百五十石取った、深見新左衞門様と云う、天下のお旗下のお前は若様だよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
可愛い児とおっしゃるから、何ぞ尼寺でお気に入った、かなりやでもお見付け遊ばしたのかしらなんと思ってさ、うかがって驚いたのは、千ちゃんお前様まえさんのことじゃあないかね。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
賤「お前様まえさんは臆病だよ、少し音がすると」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「こうやって、こう挽いてるんだぜ、木挽の小僧だぜ。お前様まえさんはおかみさんだろう、柳屋のおかみさんじゃねえか、それ見ねえ、此方こっちでお辞儀じぎをしなけりゃならないんだ。ねえ、」
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんじゃあないよ。そしてお前様まえさん、いつまでそうしているつもりなの。」
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だってお前様まえさんはお客様じゃあないかね、お客様ならわたしところ旦那だんなだね、ですから、あの、毎度難有う存じます。」と柳に手をすがって半身を伸出のびでたまま、胸と顔を斜めにして、与吉の顔を差覗さしのぞく。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうしたって、あれでさ、お前様まえさん、私ゃ飛んでもねえどじをったで。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)