前代未聞ぜんだいみもん)” の例文
「大石くんに、似たとこがありますな。一徹居士いってつこじなところ。なにしろ彼は、小学生でストライキをやったんだから、前代未聞ぜんだいみもんですよ」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
その暴状ぶりは当時戦乱に馴れた時人じじんをしてさえ「前代未聞ぜんだいみもん……」と、眉をひそめさせた程とあるから、よほどひどかったものらしい。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左樣さよう不肖ふつゝかながら、この櫻木さくらぎ畢世ひつせいちからつくして、わが帝國海軍ていこくかいぐんめに、前代未聞ぜんだいみもんある有力いうりよくなる軍器ぐんき製造せいぞう着手ちやくしゆしてるのです。
苟も身一門の末葉につらなれば、公卿華胄の公達きんだちも敢えて肩を竝ぶる者なく、前代未聞ぜんだいみもんの榮華は、天下の耳目を驚かせり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
長曾根入道興里虎徹ながそねにゅうどうおきさとこてつの一刀をふるい、三十余人を右と左に斬って落した前代未聞ぜんだいみもんの大騒動、池田屋の顛末てんまつが詳しくわかる
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そもそも富士男君の寛仁大度かんじんたいど、ゴルドン君の慎重熟慮しんちょうじゅくりょ、ドノバン君の勇邁不屈ゆうまいふくつ、その他諸君の沈毅ちんきにして明知めいちなる、じつに前代未聞ぜんだいみもん俊髦しゅんぼうであります。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そんなことがあって、数日ののち、真夜中の銀座どおりに、じつに前代未聞ぜんだいみもんの、おそろしい事件がおこりました。
鉄塔の怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
吟味、捕物の御前試合ごぜんじあいなどはまさに前代未聞ぜんだいみもん。さすがに、両奉行もあっけにとられて、茫然ぼうぜんたるばかり。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
疑いもなく、唯今の状態は、全速力沈降ぜんそくりょくちんこうを続けているものであって、海岸を十キロメートルと出ていないところで、こんな操作をするのは、前代未聞ぜんだいみもんのことだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なにをのんびりしてるのよ、あはゝゝは、ビールでもまんかねえ。」前代未聞ぜんだいみもんといツつべし。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしその時刻にはもうあの恐ろしい前代未聞ぜんだいみもんの火事の渦巻が下町一帯に拡がりつつあった。
烏瓜の花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
町の一岡っ引きのところへ、お奉行様からお使いを戴くなどと、まさに前代未聞ぜんだいみもんに相違ない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「まあ、ことしはわたしも七十になりますが、こんな大風は覚えもありません。そりゃ半蔵さんのおとっさんにお聞きになってもわかることです。まったく、前代未聞ぜんだいみもんです。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この四月以来市場しじょうには、前代未聞ぜんだいみもんだと云う恐慌きょうこうが来ている。現に賢造の店などでも、かなり手広くやっていた、ある大阪の同業者が突然破産したために、最近も代払だいばらいの厄に遇った。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
前代未聞ぜんだいみもんの不景気の而もそのドン底に卒業するとは、私達も余程廻り合せが悪い。
恩師 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もし憑きものだとすれば、こんな奇妙な憑きものは前代未聞ぜんだいみもんだし、もし憑きものでないとすれば、こんな途方とほうもない出鱈目でたらめを次から次へと思いつく気違いはいまだかつて見たことがない。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
前代未聞ぜんだいみもんの大事件なんだ。わしのところへイギリス人どもがやって来てね、地面から何か古い粘土を見つけたのさ。……(ラネーフスカヤ夫人に)あなたにも四百……な、天人のような奥さん。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「落着いて聽いて下さいよ親分、こいつは前代未聞ぜんだいみもんだ」
えらみ遊ばされし事あり此事の人の知る所なり時に元和げんな九年徳川二代將軍家御上洛じやうらくあられしかば京都の繁華はんくわ前代未聞ぜんだいみもんなり然るに其年の十月頃時の關白くわんぱく二條左大臣殿の諸大夫しよたいふにて取高とりだか七石二人扶持ふちなる河島伯耆守かはしまはうきのかみと云る人或日あるひ只一人祇園ぎをんの社へ參詣なし祇園豆腐どうふと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
前代未聞ぜんだいみもん曲者くせものだ。そもそも、こんどの間違いは、郁次郎がわしに包んでいるその秘密一つから起っておるに相違ない」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自動冐險鐵車じどうぼうけんてつしや! あゝこの前代未聞ぜんだいみもんなる鐵車てつしや製造せいざうは、隨分ぜいぶん容易ようゐことではあるまい。しかし、わたくし一個いつこ男子だんしである。
前代未聞ぜんだいみもんの脳の売買だ。黒木博士は、やりもやった。またこの矢部青年も、よく売ったものである。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
豊臣太閤に至って前代未聞ぜんだいみもんの盛事。それもはや浪花なにわの夢と消えて、世は徳川に至りて流れも長く治まる。剛強必ず死して仁義じんぎ王たりという本文をのあたりに見るようじゃ
しかしその時刻にはもうあの恐ろしい前代未聞ぜんだいみもんの火事の渦巻うずまきが下町一帯に広がりつつあった。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「あれは天保てんぽう十年のことでした。全く、あの時の御通行は前代未聞ぜんだいみもんでしたわい。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
前代未聞ぜんだいみもんの怪事件、空気男銀座にあらわる」というのだ。
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いずれにしろ、警固のものものしさや洛中の混雑は、前代未聞ぜんだいみもんなことだったらしい。はやくも
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、それが分れば、或いはこの事件は更に重大なる特性を曝露ばくろして前代未聞ぜんだいみもんの大事件に発展するのではなかろうか。これは永年探偵等をつとめて来た帆村の第六感であった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「若先生に直談判じかだんぱんというて美しい女子おなごが乗り込んで来た、前代未聞ぜんだいみもんの道場荒し」
前代未聞ぜんだいみもんの大事件がおこったのは……。
天空の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その日の夕刻、丁度黄昏たそがれどきのこと、丸ノ内にある化物ビルといわれる廃墟はいきょになっている九階建てのビルディングの、その九階の一室で、前代未聞ぜんだいみもんの奇妙な会見が行われていた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大将拝賀の式は、十一月、宮中で盛大にり行われた。文武百官式の陣坐をめぐって、朝廷の御稜威みいつと、彼の栄光を祝して、万歳をとなえた。そのさかんな景観は、前代未聞ぜんだいみもんと噂された。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それというのが、まことに前代未聞ぜんだいみもんの珍妙なる事件がふってわいたのである。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
裁きの白洲は、俄然、前代未聞ぜんだいみもんな異観を呈した。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)