倶楽部クラブ)” の例文
旧字:倶樂部
私は学生倶楽部クラブで、何時でも射撃の最優勝者ではなかったか。馬に乗りながらでも十発九中。殺してやろう、私は侮辱を受けたのだ。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
男でも日曜は新しい青いワイシャツの胸に真白な手巾ハンケチのぞかせている。教会は彼らにとって誠に楽しい倶楽部クラブ、ないし演芸場である。
それへ国沢君が、おなじく seconded by と加えてくれたので、大連滞在中はいつでも、倶楽部クラブ出入しゅつにゅうする資格ができた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この倶楽部クラブで、面白はんぶんに教えられた阿片のこころよさを幾日ぶりかで満喫したあとの利き目が、てきめんに分ったように——
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうどそこへはいってきたのはこの倶楽部クラブの給仕です。給仕はゲエルにお時宜じぎをしたのち、朗読でもするようにこう言いました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いました。あの時分文芸倶楽部クラブに花柳界の人の写真がよく出たでしょう。私のも大きく出ましたわ。——けどどうしてです。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
わが車五味坂ごみざかを下れば茂み合うかしの葉かげより光影ひかげきらめきぬ。これ倶楽部クラブの窓より漏るるなり。雲の絶え間には遠き星一つかすかにもれたり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
倶楽部クラブへ姿をあらわすことはあるが、彼は戸棚から小説本を取出して、隅っこに小さくなって頁を拡げていることが多かった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今一つは自分の折々行く青年倶楽部クラブのようなものがある。会員は多くは未来の文士というような連中で、それに美術家が二三人加わっている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ルパシカを着て、紐を前で長く結んでいる艶歌師の四角い顔が、文章倶楽部クラブの写真で見た、室生犀星むろうさいせいと云うひとに似ている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
この三月、八十人ばかりの会員を有する倶楽部クラブが設立され、社交的の会合に、はじめて淑女と紳士とを一緒にすることを目的とするのである。
『たけくらべ』が『文芸倶楽部クラブ』第二巻第四号に、『今戸心中』が同じく第二巻の第八号に掲載せられたその翌年である。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
カリエスは、大した事がなく、注射で、癒るらしいが、肺と、神経痛は、頑強で、私は時々、倶楽部クラブの三階の自分の部屋へ、うて上る事がある。
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)
フランス乙女倶楽部クラブの会員章だ。実はこの刺青を小田島に見せるために、彼女は人前で靴下止めを直す振りをしたのだ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
上野倶楽部クラブというのは私には見当がつきません。しかし不忍池しのばずのいけのほとりならばまあ下宿としては眺めもあって結構と申さなければなりますまいね。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
花の三月、日本橋倶楽部クラブで催された竹柏園ちくはくえんの大会の余興に、時の総理大臣侯爵桂大将の、寵娘おもいものの、仕舞しまいを見る事が出来るのを、人々は興ありとした。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
湯屋の二階は、一種の倶楽部クラブでしたから、新聞の種になるほどの噂は、まずこのところでさまざまに評判されました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつか、日本倶楽部クラブで、初めて閣下の崇高なお姿に接して以来、益々ますます閣下に対する私の敬慕の念が高くなったのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
十年前にくらべると、町は著るしくにぎやかになった。多くの旅館は新築をしたのもある。建増しをしたのもある。温泉倶楽部クラブも出来た、劇場も出来た。
春の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いつぞや新潮社があの跡を買取って吾々文壇の人達の倶楽部クラブとして文芸家協会に寄附するとの噂があったが、どうやらそれは沙汰止みとなったらしい。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
毎日、『少女の友』とか『少女倶楽部クラブ』というような雑誌を読んで、さもなければボンヤリ虚空をみつめていた。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
支那人、朝鮮人たち、労働者が、サヴエート同盟の土を踏むことをなつかしがりながら、大きな露西亜ロシア式の防寒靴をはいて街の倶楽部クラブへ押しかけて行った。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
浄土真宗が非常に盛で、村の寺は倶楽部クラブまたは集会所であった。家々には素晴らしい仏壇が飾ってあった。その大小が家の格を支配するということであった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これは倶楽部クラブあるいは宿屋の室内に粧飾用を兼ねて据え置き、時々刻々の風の方向を知らせる器械である。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
印刷機関はすべて思想物を避け、快楽の道具か党派の武器としてしか思想を認めない。いかなる団体も倶楽部クラブも、われわれが堕落しなければ通してはくれない。
何でもなき宗儀作法の乖背かいはいから、民心帝室を離れ、皇帝を魔王サタンと呼ぶに及び、これが近世しばしば起こる百姓乱や虚無党や自殺倶楽部クラブの有力なる遠因となれり。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
あるいはでに乗り込んで間のない人たちへ報告して多少の参考ともなり、心の準備の一助とかあるいは長途の旅の講談倶楽部クラブともなればさいわいだと思う次第である。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
この頃根岸倶楽部クラブより出版せられたる根岸の地図は大槻おおつき博士の製作にかかり、地理の細精さいせいに考証の確実なるのみならずわれら根岸人に取りてはいと面白く趣ある者なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「いいえ、今日が始めてよ、近所へ来たから寄ったんだって。———今度ソシアル・ダンスの倶楽部クラブこしらえるから、是非あたしにも這入ってくれッて云いに来たのよ」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
学生の倶楽部クラブや青年の会合には必ず女学生が出席して、才色あるものが女王クインの位置を占めていた。
将校は倶楽部クラブで夜のふけるのも知らずに踊をおどるし、兵士は疲れてぐっすり寝てしまった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
大正二年八月九月の二箇月間私は信州上高地の清水屋に滞在して、その秋神田ヴイナス倶楽部クラブで岸田劉生君や木村荘八君等と共に開いた生活社の展覧会の油絵を数十枚画いた。
智恵子の半生 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
鉄道協会とか、電気倶楽部クラブとかその他丸の内所在の建物で俳句会の催される時も、大概四時五時頃から七時頃までの間である。そうしていずれもテーブルを囲んで椅子にもたれて作る。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
同じ岡つづきのわずかな沢に、水がじめじめとして周囲は杉、中は一面にあしよりほかの草の生えないような土地がある。猟友倶楽部クラブがその片端を使って、夏分の射撃の練習場にしている。
と呶鳴るやうに言ひ、さつさと大阪劇場の地下室の将棋倶楽部クラブへはいつて行つた。
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
「そうは云うがねえ支倉君、もしこの銅版画が、僕の幻を実在に移すものだとしたら、どうするね。見給え——一八四三年八月、王立ロイヤルカリンティアン倶楽部クラブ賞盃獲得艇『神秘ミステリー』とある……」
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
其の中堅は社会主義倶楽部クラブにして、篠田長二の同胞新聞は実に其の機関たり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ロオタリイ倶楽部クラブでの、ベルばかり鳴らしてはそのたびに立ったりすわったりする学者ばかりのしかつめらしい招待会から帰ってくると、在留邦人ほうじんの歓送会が、夕方から都ホテルであるとのことで
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ソレカラ欧羅巴ヨーロッパ各国を彼方此方あちこちと行くにも皆鉄道ばかり、到る処に歓迎せられて、海陸軍の場所を始めとして、官私の諸工場、銀行会社、寺院、学校、倶楽部クラブ等は勿論、病院に行けば解剖も見せる
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
遺書なき自殺……他人もしくは公衆の面前に於ける自殺……自己及び環境を美化粉飾したる自殺……同情の情死……同性同胞の情死……自殺倶楽部クラブの存在……等、その欲求の変幻、その発露の怪奇
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
武源楼も同じく潰れて、四谷倶楽部クラブとなってしまった。
四谷、赤坂 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
矢野倶楽部クラブである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
組の誰彼が、少女倶楽部クラブか何かの口絵の、華宵かしょうとかいう挿絵画家の絵を、よくの少女と比較しているのを聞いたことがあった。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
舞踏会はそれですんだが、しばらくすると、今度はこれから倶楽部クラブに連れて行ってやろうと、例のごとく連れて行ってやろうを出し始めた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と帆村は、麻雀倶楽部クラブの競技室のカーテンを開くと、同時に叫んだ。この暑いのに、文字通り立錐りっすいの余地のない満員だった。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
浅草の古本屋で、文章倶楽部クラブの古いのをみつけて買う。黄いろい色頁の広告に、十九歳の天才、島田清次郎著「地上」と云う広告が眼につく。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
英国の倶楽部クラブの発達というものが、家庭における主婦の形式的女権じょけん窮屈きゅうくつからのがれようとする男性の自由の欲望から発達したものだという話もある。
女性崇拝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もとは夜店で果物なんか売っていたんですけれど、今じゃどうして問屋さんのぱりぱりです。倶楽部クラブへも入って、骨董こっとうなんかもぽつぽつ買っていますわ。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
数日前、私は大森の貝塚に就て、日本人が組織している考古学倶楽部クラブで講演する可く招かれた。この倶楽部は、毎月第一日曜日に大学内の一室で会合する。
この倶楽部クラブの門鑑を阿片あへんダラといった。番人は、それを認めると、鍵を出して、突当りの頑固な戸を開けた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)