今日こんち)” の例文
何卒どうかまあ、今日こんちのところは、わしに免じて許して下さるやうに。ない(なあと同じ農夫の言葉)、省吾さん、貴方あんたもそれぢやいけやせん。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
縁側えんがわへ腰をかけたりして、勝手な出放題を並べていると、時々向うの芸者屋の竹格子たけごうしの窓から、「今日こんちは」などと声をかけられたりする。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まるで知らねえつらじゃァねえんだ、おや今日こんちは、とか、まァお揃いでどちらへ、とか、うそにもその位なことをいうのが至当じゃァねえか。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
丁度凸凹でこぼこなりの姿見の前で、職工風の一人の男の頭にバリカンをかけてゐる、頭髮のモヂヤ/\した貧相なこゝの親方に、『今日こんちは。』と挨拶する。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
(進み入る。)ちょいちょいのぞいて見ようと思うのだけれど、つい御無沙汰ごぶさたになってね。(モデル娘に。)今日こんちは。
牛乳屋ちちやが露地へ入れば驚き、酒屋の小僧が「今日こんちは」を叫べば逃げ、大工が来たと見ればすくみ、屋根屋が来ればひそみ、畳屋たたみやが来ても寄りつかない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今日こんちはおめでとう」とチビ公はていねいにおじぎをした。あまりに礼儀正しいので友達はみなわらった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
派手な浴衣ゆかたのお鶴も、ちまたに影の落ちるころきっと横町から姿を見せるのであった。「今日こんちは」と遠くから声をかけて若い衆の中でも構わずに割り込んで腰を下した。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
わたくしが言いそくなったんですから、今日こんちは私が散財致して旦那に御迷惑は掛けませんが、誰だッて云うじゃア有りませんか、当然あたりまえの洒落で……サア若衆さん、わっしが悪かった
「八さんは商人あきんどじゃねえ、職人だ、江戸っ子だ、それもガラッ八って仇名のある代物なんだ。そんな、ごめんくださいなんて、おとなしい調子で言うかよ。……今日こんちは——ッ」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
今日こんちは、葬儀社でござい」等と言えば叩きのめされる危険がある。そこで土屋君も露骨には答え兼ねて旁〻かたがた多少のはくをつけるために、日頃取引関係のある陸軍を担ぎ出したのだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今日こんちア。」と、おどけて、珠子のいるソファにトンと腰をおろした。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ベゴさん。今日こんちは。おなかの痛いのは、なほったかい。」
気のいい火山弾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
今日こんちは……田辺さん——」と巡査の呼びたてる声。
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
貴郎あなた今日こんちは大層遅かつたぢやございませんか?』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そうどすうーっ。へい、御免なさい。今日こんちは」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
今日こんちは! 桝屋ますやでございます!」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今日こんちは。定食を一つ願います」
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
御用聞きの声らしく「今日こんちは」
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
今日こんちはと河下のあいさつ
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
今日こんちはあ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
今日こんちは」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女のうちには野々宮さんの妹がゐるだらう。野々宮さんの妹と一所に美禰子もゐるだらう。其所そこへ行つて、今日こんちはとか何とか挨拶をして見たい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「歌の先生、どうだ歌先、ちょっと奥さん、はははは、今日こんちア。」と、けろりと天井を仰いだが、陶然として酔える顔色がんしょく、フフンといって中音になり
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生憎あいにく今日こんちは留守にいたしやして——まあ吾家うちに不幸がごはしたもんだで、その礼廻りに出掛けやしてなあ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
三「何でも金にさえなれば摩利支天様まりしてんさまでもお祖師様そしさまでも拝むんで、それだから神様の紋散もんじらしが付いて居るんで……母親おふくろさん今日こんちは、お留守でげすか……美代ちゃん今日は」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
間もなく「今日こんちは」とあだっぽい声を先にして横町から町内の人たちだろう、若い衆や娘がまじって金ちゃんも鉄公も千吉も今日きょうどろの付かない着物を着て出て来た。三味線をかついだ男もいた。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「ベゴさん。今日こんちは。おなかの痛いのは、なおったかい。」
気のいい火山弾 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
今日こんちは——ッ……てんだ。やってみねえ」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「小父ちゃん今日こんちは。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「全体今日こんち何方どちらへ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今日こんちその急に。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
今日こんちは。
この子はいつでも「今日こんちは御祝い」と云って入って来る。そうしてうちの者から、麺麭パンの皮と一銭銅貨を貰わないうちは帰らない事に一人できめていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
秋「はい今日こんち番町ばんちょうへんに病人があって参り、帰りがけですが貴方のお眼はうでございますな」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
生憎あいにく今日こんちなんにも無くて御気の毒だいなあ。川魚のいたのに、豆腐のつゆならごはす。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今日こんちは、ねえちゃん、わらびのあるところを教えて下さいな。」
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今日こんちはあ。お米さんはどないしてはる。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
今日こんちは」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今日こんちは。
今日こんちのような有難いことは今までには無いので、この旦那さまには年来御贔屓に成りまして、羽織から着物帯煙草入駒下駄まで残らず拵えて戴いた時も随分嬉しかったが
「ああ。叔父さん、今日こんちはって、断ってはいって来るとかったのに」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日こんちはお目出度うございます」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「はははははは、今日こんちあ、」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
エヽ今日こんちは。「おやこれうおいでなすつた、金兵衛きんべゑさん今日けふはお休みかい。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
生徒せいとさん、今日こんちは。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今日こんちは、今日ア、」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ今日こんち
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三「へい今日こんちは、夜分おそく出まして、相済みません」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「はい、今日こんちは。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)