三宝さんぼう)” の例文
旧字:三寶
後に聖武しょうむ天皇が自ら三宝さんぼうやっこと宣言せられたような、主権者の権威を永遠の真理によって基礎づけるところの決然たる言葉はここには用いられていないが
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
机は白木しらき三宝さんぼうを大きくしたくらいな単簡たんかんなもので、インキつぼと粗末な筆硯ひっけんのほかには何物をもせておらぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その間に父上は戸棚から三宝さんぼうをいくつも取下ろして一々布巾ふきんで清めておられる。いや随分乱暴な鼠のふんじゃ。つつみ紙もところどころ食い破られた跡がある。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
定七は一方の手に神酒徳利みきとくり洗米せんまいの盆を乗っけた三宝さんぼうを持ち、一方の手に土蔵の鍵を持っていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
又その四隅には白木の三宝さんぼうを据えて、三宝の上にはもろもろの玉串たまぐしが供えられてあった。壇にのぼる者は五人で、白、黒、青、黄、赤の五色ごしきかたどった浄衣じょうえを着けていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すると、惣八郎の養女が静かに匕首あいくちの載っている三宝さんぼうを持って現れた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ところが、その日は、小姓こしょうの手から神酒みきを入れた瓶子へいしを二つ、三宝さんぼうへのせたまま受取って、それを神前へ備えようとすると、どうした拍子か瓶子は二つとも倒れて、神酒が外へこぼれてしまった。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
仮に差置いたような庵ながらかまえは縁が高い、端近はしぢか三宝さんぼうを二つ置いて、一つには横綴の帳一冊、一つには奉納の米袋、ぱらぱらと少しこぼれて、おひねりというのが捧げてある、真中に硯箱が出て
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、大膳が、三宝さんぼうの上の勝栗かちぐりをつまみながら、伊賀の顔を覗くと
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
白木の三宝さんぼう土盃かわらけを、黙然もくねんと、勝頼にすすめた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まっくら三宝さんぼうに、かけてった。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
きりにむせびて三宝さんぼう
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一本歯の下駄げた穿いたまま、小さい三宝さんぼうの上にしゃがんだ男が、たすきがけで身体からだよりも高くり返った刀を抜こうとするところや、大きな蝦蟆がまの上に胡坐あぐらをかいて
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「膳に添えた三宝さんぼうの上にあるは何じゃ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)