-
トップ
>
-
ゆふすゞ
日が
恐しく早く暮れてしまふだけ、長い
夜はすぐに
寂々と
更け渡つて来て、夏ならば
夕凉みの
下駄の音に
遮られてよくは
聞えない八時か九時の
時の
鐘があたりをまるで十二時の
如く
静にしてしまふ。
夕涼みには
脚の
赤き
蟹も
出で、
目の
光る
鮹も
顯る。
撫子はまだ
早し。
山百合は
香を
留めつ。
月見草は
露ながら
多くは
別莊に
圍はれたり。
厭はず
出歩行のみか
娘お
熊にも
衣類の流行物
櫛笄贅澤づくめに
着餝らせ
上野淺草隅田の
花兩國川の
夕涼み或は
芝居の
替り
目と上なき
奢を