お高は、鳥居丹波守とりいたんばのかみの上屋敷と上野こうずけ御家来衆のお長屋のあいだを抜けて、拝領町屋の横町へ出て、雑賀屋のおせい様ときくと、すぐにわかった。細い千本格子こうしをあけると、十六、七の小婢こおんなが出てきた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)