音無瀬おとなせ)” の例文
音無瀬おとなせの水がやすらかによる鷺ヶ淵は、まだ峯間みねあいから朝の陽も覗かないので、ほのかな暁闇の漂う中に、水藻の花の息づかいが、白い水蒸気となってすべてを夢の世界にしていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水馬の術などは、その馬の性状を生かすのが主意で、重いよろひを着けた人間が、馬に泳がして貰ふ術といつても宜い——まして音無瀬おとなせと言はれた名馬が、橋から落ちたくらゐのことで容易に死ぬ筈はない