阿房あぼう)” の例文
椀を伏せたような阿房あぼう峠まで、重たい水蒸気にのしかけられて、黯緑あんりょくで埋まった森の中に、水銀が湛えられる、その上に乗鞍岳が、峻厳にそそり立って、胴から上を雲に没している。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
針木はりのき峠がそうであった、阿房あぼう峠がそうであった。乗鞍はまだしも、御岳のように登山者の多い山にも登路が記入してない。或は無い方が寧ろ人を誤るおそれがなくてよかったかも知れない。
思い出す儘に (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)