もとより躋寿館に勤仕する医者には、当時奥医師になっていた建部たけべ内匠頭たくみのかみ政醇まさあつ家来辻元崧庵つじもとしゅうあんの如く目見めみえの栄に浴する前例はあったが、抽斎にさきだって伊沢榛軒しんけんが目見をした時には
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)