「思うよ。もっとも、羅生門河岸らしょうもんがしを一と廻りすると請合い五六人の岡惚れを拵える八五郎だって、考えようじゃ馬鹿馬鹿しくなるが——」
主人のお伴をして廓へ入り込んで、自分は羅生門河岸らしょうもんがしで遊んで帰るくらいのことは、かねて心得ている男であった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御熊野横町の名は昔から呼び習わしていたのであるが、近年は更に羅生門横町というあだ名が出来た。よし原に羅生門河岸らしょうもんがしの名はあるが、青山にも羅生門が出来たのである。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)