猿猴橋えんこうばし)” の例文
家の跡を見て来ようと思って、私は猿猴橋えんこうばしを渡り、幟町のぼりちょうの方へまっすぐにみちを進んだ。左右にある廃墟はいきょが、何だかまだあの時の逃げのびて行く気持を呼起すのだった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
夜はもう大分遅かったが、猿猴橋えんこうばしを渡ると、橋の下に満潮の水があった。それは昔ながらの夜の川の感触だった。京橋まで戻って来ると、人通りの絶えた路の眼の前を、何か素速いものが横切った。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)