見知り顔の船頭が猪牙舟を漕いで通るのを、窓の障子の破れ目から見て、それを呼留め、炭を貰ふと云ふやうなところがあつた。
たま/\山谷堀へ通ふ猪牙舟が、心も空の嫖客を乘せて、矢のやうに漕ぎ拔ける外には、二人の注意を捕へるものもありません。
“猪牙舟”の解説
猪牙舟・猪牙船(ちょきぶね)は、猪の牙のように、舳先が細長く尖った屋根なしの小さい舟。江戸市中の河川で使われたが、浅草山谷にあった吉原遊廓に通う遊客がよく使ったため山谷舟とも呼ばれた。長さが約30尺、幅4尺6寸と細長く、また船底をしぼってあるため左右に揺れやすい。そのため櫓でこぐ際の推進力が十分に発揮されて速度が速く、狭い河川でも動きやすかった。
語源は、明暦年間に押送船の船頭・長吉が考案した「長吉船」という名前に、形が猪の牙に似ていることとをかけて猪牙と書くようになったという説と、小早いことをチョロ・チョキということからつけられたとする説の2つがある。
(出典:Wikipedia)
語源は、明暦年間に押送船の船頭・長吉が考案した「長吉船」という名前に、形が猪の牙に似ていることとをかけて猪牙と書くようになったという説と、小早いことをチョロ・チョキということからつけられたとする説の2つがある。
(出典:Wikipedia)