渣滓おり)” の例文
伸子は、だんだん自分の心に切ない渣滓おりが溜って来るのを感じた。彼女は毎日絶え間なく飢えていた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
今は苦い渣滓おりとなって心の隅にこびりついているのを感ぜずにはいられなかった。
鰊漁場 (新字新仮名) / 島木健作(著)
渣滓おりの滲み込んでいるじくじくした樽の破片にかじりついて、酒で朽ちたじめじめした木片をさもうまそうに舐めたり、噛みさえしたりする者もいた。葡萄酒の流れ去る下水は一つもなかった。
泥まみれの酒の渣滓おりに浸した指で、壁に、血——となぐり書きした。