てこ)” の例文
始めの内は猫撫で声で、下から出て来やがったが、板前さんが叱りつけたら、間もなく本性を出しやがって、てこでも動きませんや。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
即ち原稿用紙三枚の久保田万太郎論を草する所以なり。久保田君、幸いに首肯するや否や? もし又首肯せざらん乎、——君の一たび抛下すれば、てこでも棒でも動かざるは既に僕の知る所なり。
久保田万太郎氏 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
てこでも棒でも動くものにあらず。談笑の間もなお然り。酔うて虎となれば愈然り。久保田君の主人公も、常にこの頑固さ加減を失う能わず。これ又チエホフの主人公と、面目を異にする所以なり。
久保田万太郎氏 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)