武蔵は、すれ違った一人の婦人へ振りかえっていた。もう七年も八年も見ない叔母であるが、たしかに、母方の播州佐用郷ばんしゅうさよごうから都へかたづいたというそのひとにちがいない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)