旧字:接觸
かれは塾生たちの気持ちの動きを知るために、かれらとの個人的接触の機会をできるだけ多くすることにつとめなければならなかった。
「温度の異なる二つの物体を互に接触せしめるとだね、熱は高温度の物体から低温度の物体へ、両者の温度の等しくなるまで、ずっと移動をつづけるんだ。」
「例の偵察ロケットがね、さっきから月世界の表面に接触したよ。あのロケットが送ってよこすテレビジョンが、いま操縦室の映写幕にうつっているから、見にこない」
したがって、友愛塾の関係者は、これまでなるべくその人との接触をさけるようにして来ていたのである。
できるだけ塾生たちに接触して、かれらの感想をきいたりするのだったが、今日は、広間を出るとすぐ、塾長室に行き、朝倉先生に向かって、なじるように言った。