大隠たいいん)” の例文
昔より大隠たいいんのかくれる町中まちなかの裏通り、堀割に沿う日かげの妾宅は即ちこの目的のために作られた彼が心の安息所であったのだ。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小説も書いた、画もかいた、政治もやった、女にれた事もある。けれどもみんな失敗、まあ隠者、そう思っていただきたい。大隠たいいん朝市ちょうしに隠る、と。
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この方は、まだしも健康なので、もう一つの場合は、大隠たいいんは市にかくれるなぞとの誰かの口真似をして、盛り場から盛り場へさまよつた後に、木賃宿町の一隅なぞに、自分を見出すのだ。
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)