大府大番頭だいふおおばんがしらの家名をけがすまいとおもい、また私の両親や兄弟はらからたちにき目を見せたくないばかりに、恋を捨て武士を捨て、血もなみだもない懦夫だふとなり終っていたが、今こそ、岐路きろに立った弦之丞は
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)