便所にゐた瀬田は素足すあしで庭へ飛び出して、一本の梅の木を足場にして、奉行所の北側のへいを乗り越した。そして天満橋てんまばしを北へ渡つて、陰謀の首領大塩平八郎おほしほへいはちらうの家へはしつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)