次に書中に見えてゐるのは、不音ぶいんのわび、時候の挨拶あいさつ、問安で、其末に「貧道無異に勤行仕候間ごんぎやうつかまつりそろあひだ乍憚はゞかりながら御掛念被下間敷候ごけねんくださるまじくそろ」とある。勤行と書いたのは剃髮後ていはつごだからである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)