凹字あふじ)” の例文
他の梯はあなぐら住まひの鍛冶かぢが家に通じたる貸家などに向ひて、凹字あふじの形に引籠みて立てられたる、此三百年前の遺跡を望む毎に、心の恍惚となりて暫し佇みしこと幾度なるを知らず。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
正面の新郎や新婦をはじめ、白い凹字あふじ形のテエブルに就いた五十人あまりの人びとは勿論いづれも陽気だつた。が、僕の心もちは明るい電燈の光の下にだんだん憂欝になるばかりだつた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)