例えば下野しもつけ上三川かみのかわ城趾しろあとの濠の魚は、一ぴき残らず目が一つでありますが、これは慶長二年の五月にこの城が攻め落された時、城主今泉但馬守いまいずみたじまのかみの美しい姫が、懐剣で目を突いて外堀に身を投げて死んだ。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)