金三はこう云いかけたなり、桑畑のあぜへもぐりこんだ。桑畑の中生十文字なかてじゅうもんじはもう縦横たてよこに伸ばした枝に、二銭銅貨ほどの葉をつけていた。良平もその枝をくぐりくぐり、金三のあとを追って行った。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)