一戦ひとそよ)” の例文
旧字:一戰
が、その衝撃が、忽ち火に落ちた錫箔の様に崩折れて、燃えあがるべき反抗心が、雑草を揺がす一戦ひとそよぎの風ほどの力しかないのを如何どうすることも出来なかった。
十姉妹 (新字新仮名) / 山本勝治(著)
日が暮れてからは、風が一戦ひとそよぎもしなかった。お増は腕車くるまから降りて、蒸し暑い路次のなかへ入ると、急に浅井が留守の間に来ていはせぬかという期待に、胸が波うった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)