蜻蛉とんぼ――飜弄さる――ほんろうさる
会社の帰りに社長の宅を訪問した竹山は何時もになく遅く帰つて来た。 玄関先に夫らしい足音がすると、先刻から火鉢に凭つて時計ばかりみてゐた妻君は、忙しげに立ち上つて玄関に行つた。「まあね……」と彼女は三和土の上で靴を脱いでる夫の肩に手を置いて声 …