海内かいだい)” の例文
もっとも海外に限らず海内かいだいにも多少の同情を寄せらるる人少なからぬが、その多くは官吏で飯の懸念から十分に加勢もしてくれず。
養成した当時には、養成すべき理由がありました、そのいわゆる八万騎によって海内かいだいを平定して、三百年来の泰平を開いたのです
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それ海内かいだいの文章は布衣ほいに落ち、布衣の文章は復古的、革命的思想を鼓吹こすいす。彼らのある者はみずからその然るを覚えずして然りしものあらん。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
京子けいし浪華なにはいにしへより芸園に名高きもの輩出し、海内かいだいに聞ゆるものありといへども、その該博精通、蒹葭堂の如きもの少し。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「そちは剣道では海内かいだい無双、そこまで行けばなるほどのう、それほどのこと解るであろう。……戸ヶ崎、襖をあけてみよ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
親父も喜んでわしに話す元來御目附といへば天下の樞機にあづかる人。其人のうちれば自然海内かいだいの形勢も分かるであらう。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
ケダシ士君子しくんし万巻ばんかんヲ読破スルモマタすべかラク廟堂ニ登リ山川さんせんまじわり海内かいだい名流ニ結ブベシ。然ル後気局ききょく見解自然ニ濶大かつだいス、良友ノ琢磨たくまハ自然ニ精進せいしんス。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
江戸八百万石の御威勢、海内かいだいあまねしと雖も、ひとねじりねじ切ってつかわせと言うような茶道の隠語は今が最初です。
さりながら実家さとにては、父中将の名声海内かいだいさわぎ、今は予備におれど交際広く、昇日のぼるひの勢いさかんなるに引きかえて、こなたは武男の父通武が没後は
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そこで天下の窯器を論ずる者は、唐氏凝菴の定鼎を以て、海内かいだい第一、天下一品とすることにまってしまった。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
唯今ただいま、思ひつきました。此には海内かいだい第一のお関所がござります。拙者てがたを持ちませぬ。夜あけを待ちましても同じ儀ゆゑに……ハタと当惑をつかまつります。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
当主の大膳亮は大の愛刀家——というより溺刀できとうの組で、金に飽かして海内かいだいの名刀稀剣きけんが数多くあつまっているなかに、玉にきずとでも言いたいのは、ただ一つ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
当代、海内かいだいに弓取多しといえども、信長様ほどな人物はありません。釈迦しゃかに説法ですが、あなただって、今の時勢が、このままでいるとはお思いになりますまい。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が、息子に施した最大の教育は、諸学の伝授を終えてのちに、海内かいだいの大旅行をさせたことであった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
木の根岩角に手をかけ、足を踏みしめて、ようよう飛沫ひまつ雨のごとき中に下り立ちて、巨巌の上へ登り、海内かいだい無双の大瀑布、華厳の雄姿を眺めた時には思わず快哉三呼かいさいさんこ
さすがに百戦練磨、海内かいだい一の称を得た精兵で、友軍の屍体を踏み越え、六番手まで繰りだして第一柵、第二柵まで奮進したが、悉く倒れ、射ちまくられて敗走せざるを得なかつた。
鉄砲 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
たて後世迄も美名びめい海内かいだいかゞやかし子孫の繁榮はんえいのこすはいと有難ありがたき事共なり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幸田露伴氏は、魚釣うをつりにかけては海内かいだい第一を以て自任してゐる人である。尤も露伴氏の言葉に従ふと、魚釣うをつりも上手になると、すべて専門的になるもので、氏は今では鱸の外は滅多に釣らうとはしない。
文字摺石もじずりいし、岩屋観音にも詣で参るべく、須賀川は牡丹園として海内かいだい屈指と聞けど、今は花の頃にあらず、さりながら
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一は、いま海内かいだいにときめく江戸南町奉行大岡越前守忠相。他は、酒と心中しよか五千石取ろかなんの五千石……とでも言いたい、三がい無宿むしゅく、天下の乞食先生蒲生泰軒。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
相ついで海内かいだいの注意一に朝鮮問題に集まれる今日きょうこのごろは、主人中将も予備にこそおれおのずから事多くして、またかの英文読本を手にするのいとまあるべくも思われず。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
生産すなわち武備、武備すなわち生産にして、かかる実例はかの頼襄らいじょうが、わが朝の初めて国を建つるや、政体簡易、文武一途、海内かいだいを挙げてみな兵なり。しかして天子これが元帥たり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
諸国の地理水利をはかり、土民の人情や気風をおぼえ、領主と民のあいだがどう行っているか、城下から城内の奥まで見きわめる用意をもって、海内かいだいくまなく脚で踏んで心でて歩くのが
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時の徳川氏は微々たるもの、海内かいだい随一の称を得た甲州の大軍をまともに受けて勝つ自信は鼻柱の強い三河武士にも全くない。家康の好戦的な家臣達に唯一人の主戦論者もなかつたのだ。
黒田如水 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
その大旨、義理の正にって、情勢のしりぞけ、王道をたっとび、覇略を卑み、天下を全有して、海内かいだいに号令する者といえども、その道においてせざる者は、もくして、正統の君主とすべからずとするにり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この話の海内かいだいに広く行き渡れるを知った。
余、当時汎瀾はんらんトシテ之ヲ聞キ未ダソノ意ヲ得ズ、爾後十余年、海内かいだいニ周遊シテ斯ノ技ヲ試ミ、初メテ栄辱悲歎ノ心、診察吐下ノ機ヲ妨グルコトヲ知ル——
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
当時の徳川氏は微々たるもの、海内かいだい随一の称を得た甲州の大軍をまともに受けて勝つ自信は鼻柱の強い三河武士にも全くない。家康の好戦的な家臣達に唯一人の主戦論者もなかつたのだ。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
その黄金さえ掘り出せば、日光御修繕なんか毎年引き受けたってお茶の子サイサイ、柳生の里は貧乏どころか西国一はもちろん、ことによると海内かいだい無双の富裕な家になるやも知れない——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
前回かりに壮夫わかものといえるは、海軍少尉男爵だんしゃく川島武男かわしまたけおと呼ばれ、このたび良媒ありて陸軍中将子爵片岡毅かたおかきとて名は海内かいだいに震える将軍の長女浪子なみことめでたく合卺ごうきんの式をげしは、つい先月の事にて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
よいせがれをもち、日本一の幸せ者ぞと仰せ遊ばし、またわたくしへも、筑前ほどな男は、海内かいだい幾人もおるまい、よい良人を選び当て、そもじも眼が高いことよ——などとおたわむれも仰っしゃいました
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然し孫氏旧蔵の白定窯鼎が来るに及んで、諸の窯器えうきは皆其の光輝を失つたほどであつた。そこで天下の窯器を論ずる者は、唐氏凝菴の定鼎を以て、海内かいだい第一、天下一品とすることに定まつてしまつた。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「山陽は足跡そくせき海内かいだいにあまねしとか、半ばすとか自慢をしていますが、この辺までは来たことはないでしょう」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
筑後ちくご柳河やながわの人で南紀理介なんきりすけ、槍術では海内かいだい無双むそうという聞えがあった。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおっ! 馬を彫らせては、海内かいだい随一の名ある作阿弥殿さくあみどの——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
高橋伊勢守は後の泥舟翁でいしゅうおうやりを取っては当時海内かいだい随一人ずいいちにん