およん)” の例文
兼吉との婦人とは幼少時代からの許嫁いひなづけであつたのです、しかるに成人するにおよんで、婦人の母と云ふが、職工風情ふぜいの妻にしたのでは自分等の安楽が出来ないと云ふので
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しかれども世運せいうんようやくくだるにおよんで人事日にしげく、天然の教いまだもって邪をただすに足らず。これをもって名教をほどこせり。しかしてまた、いまだ下愚かぐを移すに足らず。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
この感覚鋭敏のときにあたり染習せんしゅうせし者は、長ずるに及んでこれをあらためんとほっするもべからざる、なお樹木の稚嫩ちどんなるとき、これを撓屈とうくつすれば、長ずるにおよんでついにこれをなおくすべからざるがごとし。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
歯牙しがにも掛けずありける九州炭山坑夫の同盟罷工今やまさに断行せられんことの警報伝はるにおよんで政府と軍隊と、実業家と、志士と論客とな始めて愕然がくぜんとして色を失へり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
平生へいぜい莫大の保護金を得て配当を多くして居ると云ふのも、一朝事ある時の為めではわせんか、しかるに此の露西亜との戦争と云ふ時におよんで、私共の船は一噸いつトン三円五十銭平均で御取上げ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)