鴛鴦ゑんあう)” の例文
かはらぬちぎりのれなれや千年せんねん松風しようふう颯々さつ/\として血汐ちしほのこらぬ草葉くさばみどりれわたるしもいろかなしくらしだすつき一片いつぺんなんうらみやとぶらふらん此處こゝ鴛鴦ゑんあうつかうへに。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たつた一と眼で雇主やとひぬしをすつかり夢中にさせてしまひ、何百兩といふ巨額の支度金を取つて妾奉公に出た上、鴛鴦ゑんあうふすまの中で、したゝかに垂れ流すといふ、大變な藝當をやる女もあつたのです。
行暮ゆきくれて一夜ひとよ宿やどうれしさや、あはかしさへたまて、天井てんじやうすゝりうごとく、破衾やれぶすま鳳凰ほうわうつばさなるべし。ゆめめて絳欄碧軒かうらんへきけんなし。芭蕉ばせをほねいはほごとく、朝霜あさしもけるいけおもに、鴛鴦ゑんあうねむりこまやかなるのみ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其處には、枕屏風まくらびやうぶを取拂つて、鴛鴦ゑんあうの床はあふれるばかりの血汐にひたされ、明る過ぎるほどの明るさの中に、のどをゑぐられた、花嫁お君の淺ましい死骸が、おほう物もなく横たはつて居るのです。