馴鹿となかい)” の例文
羊歯や馴鹿となかい苔が岩の腹に喰いついているのが認められるだけで、人が住んでいるようなしるしは、なにひとつ見あたらなかった。
海豹島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
このほかれんぢゃー(馴鹿となかい)のうへにれんぢゃーのかたち彫刻ちようこくしたものや、人間にんげんかたちなどをつたものもすくなくありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
伸子たち二人が秋山宇一のところにいたら、そこへ、シベリア風のきれいな馴鹿となかいの毛皮外套を着て、垂れの長い極地防寒帽をかぶったグットネルが入って来た。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
サモエデスは馴鹿となかいに注意深き余りその灰褐色の浅深を十一、二の別名で言い分け、アフリカのヘレロ人は盛んに牧牛に勤め牛の毛色を言い分くる語すこぶる多く
鹿や兎や馴鹿となかいは自慢の速足を利用して林から林へ逃げて行く。小鳥の群は大群を作って空の大海を帆走って行く。斑馬の大部隊はたてがみを揮って沼の方角へ駈けて行く。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
灰色兎・栗鼠リス・蜂鳥.馴鹿となかい・かんがるう・野犬などを虐殺するイギリス人の狩猟趣味を指摘し
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「あの女は、寒気に充分な抵抗力がある。なにしろ、馴鹿となかいがいるあたりの北カナダへいってさえ、肉襦袢タイツ姿で平気でいれる奴だ。しかし、どうも近ごろ様子が変っている」
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
馴鹿となかいのしり光つてる。
そりとランターン (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そういう長い旅行をしてそのすえに、馴鹿となかいの群をつれて遊牧している二つか三つの北露ポモール人の天幕に行きつくのである。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その時代じだいんでゐた獸類じゆうるいも、今日こんにちわれ/\のるものとたいしたかはりはなく、あのまんもすといふおほきなぞうや、馴鹿となかいがヨーロッパなどにんでゐるといふようなことはもうなくなつてしまひました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
馴鹿となかいのハンドバッグを抱えて、すらりと玄関に立っているので、どこのお嬢さんかと思ったら、お目見得にきたハウス・メードだったには、気を悪くした。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「満寿子さん、形見をくれるつもりなら、ルロンの黒い馴鹿となかいのハンド・バッグたのむよ」
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
石田氏は、言いたいことが腹に溜まりたまっているふうで、煙草を喫いながらジリジリしているところへ、馴鹿となかいの黒いハンド・バッグを抱えた、二十四五の女のひとが入ってきた。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
庶務の警官を呼んで署長がなにかささやくと、間もなく衝立の間から、黒のスーツに馴鹿となかいの黒いハンドバッグを抱えた安芸子が、昂奮に蒼ざめて、唇をふるわせながら、入ってきた。
雪間 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)