首級しるし)” の例文
大坂陣を通じて三千七百五十級の首級しるしを挙げ、しかも城将左衛門尉幸村の首級を挙げたものは、忠直卿の軍勢に相違なかったのだ。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
丘では、追々とひきあげて来る人々が、各〻て来た敵の首級しるしを、藤吉郎の床几しょうぎの前にならべ合って、血のさかもりにどよめいていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その泣き顔が気に食わぬ。かたきのいるのが、わからんか。これからすぐ馬で城下に引返し、百右衛門の屋敷に躍り込み、首級しるし
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それから又表座敷へ廻って、越後守光長の首級しるしをも貰い受けよう。そういう復讐の念に燃えるので、滝之助は赫々かっかっと上気して、汗は泉の如く身内に吹き出た。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
これは開闢かいびゃく以来の大仇討、昨夜本所松坂町吉良上野介様のやしきへ討入った浅野浪士の一党四十七人、しゅうあだ首級しるしを揚げて、今朝こんちょう高輪の泉岳寺へ引上げたばかり
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
勝頼の首級しるしに対しても、信長のように足蹴にはせず、君、武勇におかせられては父君にも勝らせ給えど、いまだ年若くおわせしため跡部長坂の小人を愛し武功の老臣をしりぞけ給い
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
捩ぢふせられて、忽ち、首級しるしをあげられてしまふ奴だね
その最期のとき、首に掛けていた大海の茶入れと、腰なる新見国行あらみくにゆきの刀は、彼の首級しるしに添えて、やがて吉川元春の前に送られた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去年三月殿中において高家の筆頭吉良上野介にりつけ、即日切腹、お家断絶となった主君浅野内匠頭の泉下の妄執もうしゅうを晴さんために、昨夜吉良邸に乗こんで、主君の仇上野介の首級しるしを揚げ
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
越えて数日、海蔵川原に並んで立っていた五つの獄門台から、赤報隊の元凶たちの首級しるしは取り捨てられていた。そしてそのあと、代りに、その中央の獄門台に、若い武士の首級が一つ晒されていた。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「御首級しるし頂戴いたしたく……」
首頂戴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「これは龍耳老人へおくる弦之丞の寸志じゃ。帰国の上は、何もいわずに、孫兵衛の首級しるしにそえて、お渡しいたしてくれい」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万一にも、大七のたずさえてきた三郎進殿の密書が、余人の手に入ったら、八雲様は、即日に殿より首級しるしを召されよう。そう考えて、自分が捕えた。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青池駿河守、道家清十郎、森三左衛門可成よしなり、そのほか織田家の名ある士たちの首級しるしを、飽き飽きするほど、検分した。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして彼の消極戦術の非を鳴らし、もし自分に一軍をかすならば江北へ押し渡って、魏帝曹丕そうひ首級しるしをあげて見せる。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜ右顧左眄うこさべんをするか。きょうの御法事に、上野介の首級しるしを供えぬのか。——時期の何のと、小賢こざかしいことをいうているような事で、成就じょうじゅがなろうか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わし一人では御始末をするすべもなく、あれに取りのこして来たお首級しるしのない屍がある。あれをどこぞ人目に見出されぬ土中へ埋めてお隠し申しあげてくれ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「甲州の一族大将は、枕をならべて討死したが、それに反して、お味方には一将の首級しるしも敵に取られていない」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗時は、個々に訪ねて、今一度、妹と佐殿と会わせた上で、真実を闡明せんめいする。もし飽くまで妹の変心であったなら、必ず妹の首級しるしを以て各〻へ非を詫びよう。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして上月こうづき城は敵手にゆだね、残る唯一なるもの——すなわち主君尼子勝久の首級しるしまで、敵に捧げてしまった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻がお側におりながらやみやみお首級しるしを人のはずかしめに任せるわけにはまいりませぬ。わたくしもお供いたしまする。いさぎよく、罪を詫びて、お腹をお召しあそばしませ
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここまでして、かんじんな首級しるしを取らずに行ってよいものか。なにを証拠に、故郷くにの衆へ、お通を成敗したと証拠だてることができよう。……待て、今わしが」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどその首級しるしをあげて、尊氏へ、また世上へ、示すのでなければ、なおまだおおやけな認証とはなりえない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庵原将監いはらしょうげんと名乗って来た者を突き伏せた。しかし、突き捨ててまたすぐ進む。——鉄漿公方おはぐろくぼうはいずれにありや。駿河殿の首級しるしな申しうけん。雨も叫ぶ。風も叫ぶ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鹿之介は川へ飛び入ったが、かねてはかっていたことなので、岸から船中から投げ槍を下し、また相継いで川へ飛び込んで格闘かくとうし、ついにその首級しるしを挙げてしまった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『まあ聞け。——貴様、死ぬことばかり急いでいるが、上野介の首級しるしを貰わずに、笑って死ねるか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半日も、無数の首級しるしを検分して、誰もが血臭いにおいに附きまとわれてならなかったとみえる。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
枕をならべて討死した麾下きかの部将徳山五兵衛は、獅子児糟屋かすや助右衛門に首をさずけ、宿屋七左衛門は、同じく小姓組桜井佐吉に討たれ、山路将監は、加藤孫六が首級しるしをあげた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いかなる条件にも、家康は筑前にたいし、和を持って解決する望みはもたぬ。あくまで、ここに雌雄しゆうを決し、秀吉の首級しるしをとって、天下に正義あることを知らしめるであろう」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したが、果たして、小次郎の首級しるしをさげて、御生前に、再びお目にかかれるや否や。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すでに、駿河勢は、総くずれとなり、義元殿のお首級しるしも、味方の手にあがりたれば、この上の長追いは無用とのお下知げぢ。——全軍ひとまず間米山の御陣地のもとへあつまれとの御命令である」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『見られよ、郡兵衛殿、いずれもかように一念を遂げ、上野介殿の首級しるしを泉岳寺へ持参する途中でござる。貴公は又、何用あって、この雪解ゆきどけのなかを、御苦労にもうろうろ歩いておられるのか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御用は、今度の事件が聞えて、それについてのお取糺とりただしらしい。武蔵の首級しるしさえ取れば、わしの面目は立派に立ち、言い開きもつくのじゃが、沢庵坊主め、何といっても意地を曲げて渡しおらぬ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主従ふたりがかりでようやく弥太郎の首級しるしを獲たのであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侏儒はそれをふところに納め、孫兵衛の首級しるしを袖にくるんで
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「して、中川の首級しるしは」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)