青海波せいがいは)” の例文
五つぎぬ上衣うわぎ青海波せいがいはに色鳥の美しい彩色つくりえを置いたのを着て、又その上には薄萌黄うすもえぎ地に濃緑こみどりの玉藻をぬい出した唐衣からごろもをかさねていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二人共に何れ劣らぬ優美の姿、適怨清和、きよくに隨つて一絲も亂れぬ歩武の節、首尾能く青海波せいがいはをぞ舞ひ納めける。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
源氏の紅葉賀もみじのが青海波せいがいはの巧妙であったことを忘れがたく思召おぼしめして、東宮が源氏へかざしの花を下賜あそばして、ぜひこの舞に加わるようにと切望あそばされた。
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
持まへの負けじ氣性は勝手に馳せ廻りて雲のやうな形をこしらへぬ、氣違ひ街道、寐ぼれ道、朝がへりの殿がた一順すみて朝寐の町も門の箒目はゝきめ青海波せいがいはをゑがき
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
乱れた姿で、中形青海波せいがいはの浴衣の腕を露呈あらわに、片手に黒いかめいだき、装塩もりじおをしながら、つまんだなりを、抜いて持った銀のかんざしの脚で、じゃらすように平直ならしていた。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは敷二枚の夜着と掛けが一枚ずつ、都合四枚一組の青海波せいがいは模様の縮緬ちりめん蒲団ふとんなのでございました。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
頭中将重衡卿以下公卿、殿上人が綺羅きら星の如く並んでいる中で、維盛卿は、桜の花をかざして青海波せいがいはを舞われたのじゃ、天性の美貌と若さに加えて、ひく手、さす手の巧みさ、鮮やかさ
藍をたゝへし靜寂の、かげほのぐらき青海波せいがいは
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
主人の院はお折らせになった菊を大臣へお授けになるのであったが、青海波せいがいはの時を思い出しておいでになった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
持まへの負けじ気性は勝手にせ廻りて雲のやうな形をこしらへぬ、気違ひ街道、ぼれ道、朝がへりの殿がた一順すみて朝寐の町もかど箒目ははきめ青海波せいがいはをゑがき
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あさがへりの殿とのがた一じゆんすみて朝寢あさねまちかど箒目はゝきめ青海波せいがいはをゑがき、打水うちみづよきほどにみし表町おもてまちとほりを見渡みわたせば、るはるは、萬年町まんねんてう山伏町やまぶしてう新谷町しんたにまちあたりをねぐらにして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
源氏の中将は青海波せいがいはを舞ったのである。二人舞の相手は左大臣家の頭中将とうのちゅうじょうだった。人よりはすぐれた風采ふうさいのこの公子も、源氏のそばで見ては桜に隣った深山みやまの木というより言い方がない。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)