)” の例文
何しても絶代の明師が不測の難にうて遠流おんるの途に上るのだから、貴賤道俗の前後左右に走り従うもの何千何万ということであった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
太上老君たいじょうろうくん八卦炉はっけろ中に焼殺されかかったときも、銀角大王の泰山たいざん圧頂の法にうて、泰山・須弥山しゅみせん峨眉山がびさんの三山の下につぶされそうになったときも
「……あてなあ、今大阪の南の方にいるねんけど、えらい目にうてしもて、……着物盗まれてしもてん。」「なんやて、着物を?……あんた何してたん?」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まして、家人たちが、神隠しにうた姫を、探しあぐんで居ようなどとは、思いもよらなかったのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
加賀の某郡の下衆げす七人一党として兵仗を具えて海に出で釣りを事とす、ある時風にうて苦しむと遥かに大きな島ありて、人がわざと引き寄するようにその島に船寄る
……あれはたまごいの験者げんじゃどもが、どこぞの山へ、山籠やまごもりの行に出掛けて行くのだ。誰やら神隠しにでもうた人々のあくがれ迷う魂を尋ねて、山へ呼ばいに行くところなのだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
兼道も、あの家は正暦しょうりゃく年間より一度も火災にうたこともないめでたい家、住み古したれど、当座のご用に献じたいと申し立ておるとか。……そう致したら工事は幾日で出来あがるな
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
科学知識の無上の大光明に照らされる時節にうても、ついにその魔力をうしなわないどころか、かえってその怪作用を数層倍してその両博士の全生涯をアラユル方向に蹂躙じゅうりんし嘲弄している。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
誰か凋落ちょうらくの秋にうては酸鼻さんびせざらん。人生酔うては歌い、醒めては泣く、就中なかんずく余は孤愁こしゅうきわまりなき、漂浪人の胸中に思い到るごとに堪えがたき哀れを感じて、無限の同情を捧ぐるのである。
何うたって何うにもうにもひどい目にうたぜ、わしア縁の下に隠れて、うしてお前様死人しびととは知らぬから先に逃げた奴が隠れて居ると思うたから、其奴そいつの帯をつかんでちま/\と隠れて居ると
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は誰のうらみを受けてこのような目にうたのか知れぬがほんとうの心を打ち明けるなら今の姿をほかの人には見られてもお前にだけは見られとうないそれをようこそ察してくれました。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それへ来たのはどなた様じゃ! もしやこのばばが日頃信仰する観世音菩薩かんぜおんぼさつ化身けしんではおさぬか。あわれ、お助けなされませ。——外道げどうのために、この難儀な目にうた不愍ふびんなばばを!
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言いたい傍題ほうだいな事を言って居る人々も、たった此一つの話題を持ちあぐね初めた頃、噂の中の大師恵美朝臣えみのあそんの姪の横佩家よこはきけ郎女いらつめが、神隠しにうたと言う、人の口の端に、旋風つじかぜを起すような事件が
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「いやひどい目にうた。しかしこの荒天も暁までには収まるだろう」と、諸大将と共に語り合っていたが、それまたつかであった。深夜に至ってからこの暴風雨あらしの中を二騎の早打ちが着いて
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「………えらい目にうたけど、板倉に助けて貰うてん」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)