にげ)” の例文
も見ずににげさりけり斯ることの早兩三度に及びし故流石さすがの久八もいきどほり我が忠義のあだ成事なること如何いかにも/\口惜くちをしや今一度あうて異見せん者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
行歩ぎやうぶかなへる者は、吉野十津川の方へ落ゆく。あゆみもえぬ老僧や、尋常なる修業者、ちごどもをんな童部わらんべは、大仏殿、山階やましな寺の内へ我先にとぞにげ行ける。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
答は無くて揮下ふりおろしたる弓の折は貫一が高頬たかほほ発矢はつしと打つ。めくるめきつつもにげ行くを、猛然と追迫おひせまれる檳榔子は、くだんの杖もて片手突に肩のあたりえいと突いたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と云いながら彦六はにげ帰って此の事を長屋中へ話して歩きまして、長屋中で騒いでいるのが文治の耳へ入ると、聞捨てになりませんから、日の暮々くれ/″\に藤原の所へ来て
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私はその時に新銭座にすんで居たから、とてもこりゃ戦争になりそうだ、なればどうも逃げるよりほか仕様しようがないと、ソロ/\にげ仕度をすると云うような事で、ソコでいよいよ期日も差迫さしせまっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
むかし、「う」のおかあさんが子供こどもとき近所きんじよ火事くわじがあつたんで、たべかけてゐたさかなを「うのみ」にしてにげだしたさうです。ほんとだかどうだかりません。うそだとおもつたら先生せんせいいてごらん。
おこしもたてず突殺す故馬士まご仰天ぎやうてんなしにげんと爲すを一人の旅人飛蒐とびかゝつて是をも切殺すに供の男は周章狼狽あわてふためきあとをも見ずして迯歸にげかへりける故やがて盜賊は荷繩になは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さあ、つかまつて了つて、其処そこ場図ばつにげるには迯られず、阿母おつかさんはたりかしこしなんでせう、一処に行け行けとやかましく言ふし、那奴は何でも来いと云つて放さない。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
殺したりと白状はくじやういたせどもぬすみたる金も見えず又女を殺したる刄物はものもなしとるに旅僧頭を上げ其せつぬすみし金子きんす刄物はものにげせつ取落とりおとし身一つになり候處を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)