輪袈裟わげさ)” の例文
それはささやかな仏壇の前に、キチンと坐って、一心不乱に読経どきょうしている、輪袈裟わげさを掛けた切髪の女の後ろ姿ではありませんか。
昨夜ゆうべ、この露路に入った時は、紫の輪袈裟わげさを雲のごとく尊くまとって、水晶の数珠じゅずを提げたのに。——
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祭文語りは惣髪そうはつを肩にかけ、下頤したあごひげを生やし、黒木綿を着て、小脇差を一本さし、首に輪宝りんぽう輪袈裟わげさをかけ、右の手に小さな錫杖しゃくじょう、左には法螺ほらの貝、善光寺縁起から
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
普通の法衣の如く輪袈裟わげさをかけ、結跏趺座けっかふざして弥勒のいんを結びたるが、作者の自像かと思わるるふしあり。全体の刀法すこぶ簡勁かんけい雄渾ゆうこんにして、鋸歯状きょしじょう、波状の鑿痕さっこん到る処に存す。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長頭丸が時〻おしえを請うた頃は、公は京の東福寺とうふくじの門前の乾亭院かんていいんという藪の中の朽ちかけた坊に物寂ものさびた朝夕を送っていて、毎朝〻輪袈裟わげさを掛け、印を結び、行法怠らず、朝廷長久、天下太平
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
和尚さんは五里の道を自転車でとばして来て、汗を入れると明るいうちに大きな立派な仏壇の前で読経にかかる。農家の人たちもそれぞれに輪袈裟わげさのようなものを首にかけて揃ってそれに和する。
山の秋 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
ある日女将は輪袈裟わげさをかけ、手に数珠じゅずをかけてたずねて来た。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
養はるる寺の庫裏くりなる雁来紅がんらいこう輪袈裟わげさは掛けでとりおはましを
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
それはさゝやかな佛壇の前に、キチンと坐つて、一心不亂に讀經どきやうしてゐる、輪袈裟わげさを掛けた切髮の女の後ろ姿ではありませんか。
坊主ばうず懐中ふところ輪袈裟わげさつてけ、老爺ぢい麻袋あさふくろさぐつた、烏帽子えぼうしチヨンかぶつて、あらためてづゝとた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「でもね、親分。あの仇っぽいお半坊が、被布ひふの上へ輪袈裟わげさかなんか掛けて、唵阿牟伽オンアボキャやる図なんてものは、ウフ」
「でもね、親分。あの仇つぽいお半坊が、被布ひふの上へ輪袈裟わげさか何んか掛けて、唵阿牟伽オンアボキヤやる圖なんてものは、ウフ」
此前見た時の神妙な姿と違つて、思ひきり紅白粉の薄化粧をした上、輪袈裟わげさどころか燃え立つやうな長襦袢ながじゆばん一枚になつて、胸もあしも淺間しいまでに取亂したまゝ、その左の乳のあたりへ
其處では輪袈裟わげさをかけた無道軒が、腕をまくりあげて威張り散らしてをります。
この前見たときの神妙な姿と違って、思いきり紅白粉の薄化粧をした上、輪袈裟わげさどころか燃え立つような長襦袢ながじゅばん一枚になって、胸もあしも浅間しいまでに取乱したまま、その左の乳のあたりへ