貴方様あなたさま)” の例文
旧字:貴方樣
「ホヽヽヽ貴方様あなたさまも、他人の秘密を聴くことが、お好きだと見えますこと。」夫人は、たちまち信一郎を突き放すようにった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これが奥の院と申す事で、ええ、貴方様あなたさまが御意の浦安神社は、その前殿まえどのと申す事でござります。御参詣おまいりを遊ばしましたか。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伴「旦那様、此の頃は貴方様あなたさまうなさいました、ろく/\御膳ごぜんあがりませんで、今日はお昼食ひるもあがりませんな」
お尋ねがなくとも申し上げて貴方様あなたさま(W氏)の御分別を仰ぎたいと思うておったところで御座いました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
明かしちゃ、つまらない話ですが、実は、貴方様あなたさまをたずねて諸所を歩き廻っているうち、野鍛冶の半五郎という男をッつかまえて、その半五郎の口から、お蝶が鍛冶小屋に泊ッたことを
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此が奥の院と申す事で、えゝ、貴方様あなたさま御意ぎょいの浦安神社は、其の前殿まえどのと申す事でござります。御参詣おまいりを遊ばしましたか。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お嬢様が萩原様に逢いたいとわたくしをお責め遊ばし、おむずかって誠に困り切りまするから、どうぞ貴方様あなたさま、二人の者を不便ふびん思召おぼしめしお札を剥して下さいまし
孝「貴方様あなたさま左様そんな御無理な事をして、わたくしのような虚弱ひよわい身体にきずでも出来ましては御奉公が勤まりません」
「実説正銘にござりまして、へい。餅屋みせでは、じじいの伝五めに、今夜、貴方様あなたさま、お珊の方様、」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しきりとその懐中ふところ覗込のぞきこみますのを、じろじろ見ますと、浅葱あさぎ襦袢じゅばんはだけまするまで、艶々つやつや露も垂れるげな、べにを溶いて玉にしたようなものを、こぼれまするほど、な、貴方様あなたさま
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴方様あなたさまにも何時いつもお変りなく、一寸ちょっと伺いたく思いやすが、何分にもと訳あって取紛とりまぎれまして御無沙汰致しましたが、段々承れば宿屋店やどやみせをお出しなすったそうで、世界も変れば変るもので
……貴女様あなたさまはだ移香うつりが、脈のひびきをお釵から伝へ受けたいのでござります。貴方様あなたさま御血脈おけちみゃく、其が禁厭まじないに成りますので、お手に釵の鳥をばお持ち遊ばされて、はい、はい、はい。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
へい/\もう姓名なまへまうすのは、おはづかしうてまうせませぬが、斯様かやう御親切ごしんせつうへげて、御飯ごぜんまでくださる貴方様あなたさまのことでございますから、かくさず申上まうしあげますが、わたくし芝片門前しばかたもんぜんりました
貴方様あなたさま、何か鍋でめしあがりたいというおことばで、いかようにいたして差し上げましょうやら、右、女どももやっぱり田舎いなかもののことでございますで、よくお言がのみ込めかねます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴方様あなたさまは番町の殿様で
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「加減をして、うめて進ぜまする。その貴方様あなたさま、水をフト失念いたしましたから、精々せっせと汲込んでおりまするが、何か、別して三右衛門さんえむにお使でもござりますか、手前ではお間には合い兼ね……」
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴方様あなたさまは?」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)