虫眼鏡むしめがね)” の例文
「ええ、一度出してもらったンですけど、てんからないンですよ。虫眼鏡むしめがねでみるような広告が、新しい新聞で八拾円なンですものね」
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「待ってらっしゃい、秘密はキット此指環にあるワ、虫眼鏡むしめがねでなくたって、とつレンズの代りをするものならいいわけでしょう、これはどうでしょう」
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
九段くだん遊就館ゆうしゅうかんを石で造って二三十並べてそうしてそれを虫眼鏡むしめがねのぞいたらあるいはこの「塔」に似たものは出来上りはしまいかと考えた。余はまだながめている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はずかしそうにしてす、おたけを、てのひらから、つまさきまで、若者わかものは、うすぐら提燈ちょうちんらしながら、虫眼鏡むしめがねでこまかにながめていたが、やがて、かおげると
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
虫眼鏡むしめがねで覗いて見たら、毛穴や産毛まで、ちゃんとこしらえてあるのではないかと思われた程である。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そもそも鑑定家かんていかなるものはややもすると虫眼鏡むしめがねなどをふり廻して、我々素人しろうとおどかしにかかるが、元来彼等は書画の真贋しんがんをどの位まで正確に見分ける事が出来るかと云ふと、彼等も人間である以上
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
てんでんに虫眼鏡むしめがねで、あつちこつちのぞく。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「麗子さん、大きい凸レンズは無いでしょうか、——虫眼鏡むしめがねですよ、——余程大きいのでないといけないが——」
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それから真偽しんぎの鑑定のために、虫眼鏡むしめがねなどをはさない所は、誠吾も代助も同じ事であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
明智はそこへひょいと一つの虫眼鏡むしめがねを放り出していった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
加奈子は思わず四辺あたりを眺めました、が上野公園の木立の中で、虫眼鏡むしめがねを手に入れる工夫は思いつきません。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
頑愚がんぐなどと云う嘲罵ちょうばは、てのひらせて、夏の日の南軒なんけんに、虫眼鏡むしめがねで検査しても了解が出来ん。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)