菩提樹ぼだいじゆ)” の例文
いや、みづから大凡下だいぼんげの一人としてゐるものである。君はあの菩提樹ぼだいじゆの下に「エトナのエムペドクレス」を論じ合つた二十年前を覚えてゐるであらう。
或旧友へ送る手記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
菩提樹ぼだいじゆ下の見証や、ハルラ山洞の光耀や、今一々わづらはしく挙証せざるも、真の見神の、偉大なる信念の根柢たり、又根柢たるべきは了々火よりもあきらかなり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
あゝ横笛、花の如き姿いまいづこにある、菩提樹ぼだいじゆかげ明星みやうじやうひたひらすほとり耆闍窟ぎしやくつうち香烟かうえんひぢめぐるの前、昔の夢をあだと見て、猶ほ我ありしことを思へるや否。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
仏牙寺ぶつがじにまうできたりて菩提樹ぼだいじゆ種子しゆし日本にも渡れるをおもふ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
人はゆきます遊歩場、緑色濃き菩提樹ぼだいじゆの下。
白膠木ぬるであふち、名こそあれ、葉廣はびろ菩提樹ぼだいじゆ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
柳や菩提樹ぼだいじゆべんの多い
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
法師じみた丈艸ぢやうさうが、手くびに菩提樹ぼだいじゆの珠数をかけて、端然と控へてゐたが、隣に座を占めた乙州おつしうの、絶えず鼻をすすつてゐるのは、もうこみ上げて来る悲しさに、堪へられなくなつたからであらう。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
菩提樹ぼだいじゆがくれののりその
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
彼はこの恍惚くわうこつたる悲しい喜びの中に、菩提樹ぼだいじゆの念珠をつまぐりながら、周囲にすすりなく門弟たちも、眼底を払つて去つた如く、唇頭しんとうにかすかなゑみを浮べて、恭々うやうやしく、臨終の芭蕉に礼拝した。——
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)