若檀那わかだんな)” の例文
雪は若檀那わかだんな様に物を言う機会が生ずる度に、胸の中で凱歌がいかの声が起る程、無意味に、何の欲望もなく、秀麿を崇拝しているのである。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さりながら論語ろんごきて梅暦むめごよみ六韜三略りくとうさんりやくとする当世たうせい若檀那わかだんな気質かたぎれとは反対うらはらにて愈々いよ/\たのもしからず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
若檀那わかだんなの御様子はどうも変じゃございませんか」文吉は宇平の事を、いつか若檀那と云うことになっていた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ところが或る朝、突然を通じたので会って見ると、斜子ななこの黒の紋付きに白ッぽい一楽いちらくのゾロリとした背の高いスッキリした下町したまち若檀那わかだんな風の男で、想像したほど忌味いやみがなかった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかし忠兵衛は大家たいけ若檀那わかだんなあがりで、金をなげうつことにこそ長じていたが、おしんでこれを使うことを解せなかった。工事いまだなかばならざるに、費す所は既に百数十両に及んだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一人は津軽家の医官矢島氏の当主、一人は宗家の医官塩田氏の若檀那わかだんなである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)