花屋敷はなやしき)” の例文
たふうへにははとあそぶさうである。く。花屋敷はなやしきをのがれたざうたふしたきた。ざう寶塔はうたふにしてしろい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
真澄は上福島かみふくしまにいる友人の家へ年賀に往って非常に酔い、夜の十時ごろ阪急線の電車に乗ってやっと花屋敷はなやしきまで帰って来た。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
レコードは浅草あさくさの盛り場の光景を描いた「音画」らしい、コルネット、クラリネットのジンタ音楽に交じって花屋敷はなやしきを案内する声が陽気にきこえていた。
時事雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それからすぐ浜町はまちやう丁目ちやうめ花屋敷はなやしき相鉄あひてつといふ料理屋ちややつて、おぜんあつらへ、うちの車をやつて、の車ですぐてくれとつて梅廼屋うめのやむかへにやりました。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
つぎ瓢箪池へうたんいけうづめたあと空地あきちから花屋敷はなやしきかこそとで、こゝには男娼だんしやう姿すがたられる。方角はうがくをかへて雷門かみなりもんへんでは神谷かみやバーの曲角まがりかどひろ道路だうろして南千住行みなみせんぢゆゆき電車停留場でんしやていりうぢやうあたり
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
花屋敷はなやしきが出来て、いろいろの動物が来たり、菊人形が呼び物になったのは、ずっと後のことです。一廻りしますと仲見世へ出ます。仁王門におうもんから広小路ひろこうじまで、小さな店がぎっしりと並んでいます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「皆花屋敷はなやしきへ入れますんで、生人形でございます」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
上野うえのの動物園の象が花屋敷はなやしきへ引っ越して行って、そこで既往何十年とかの間縛られていた足の鎖を解いてもらって、久しぶりでのそのそとおりの内を散歩している、という事である。
解かれた象 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
準備が整って予定の時刻が迫ると、見物人らは一定の距離に画した非常線の外まで退去を命ぜられたので、自分らも花屋敷はなやしき鉄檻てつおりの裏手の焼け跡へ行って、合図のラッパの鳴るのを待っていた。
Liber Studiorum (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)