色硝子いろガラス)” の例文
それでもまだ金のりない時には赤い色硝子いろガラス軒燈けんとうを出した、人出入の少い土蔵造どぞうづくりのうちへ大きい画集などを預けることにした。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
翁は人の来ない時でも、独り演壇の上に書物を開いて、両側の色硝子いろガラスに夕日の輝く時分まで熱心に書見にふけっている場合がある。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
階下は銀座の表通から色硝子いろガラスの大戸をあけて入る見通しの広い一室で、坪数つぼすうにしたら三、四十坪ほどもあろうかと思われるが
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから青や紺や黄やいろいろの色硝子いろガラスでこしらえた羽虫が波になったり渦巻うずまきになったりきらきらきらきら飛びめぐりました。
窓に色硝子いろガラスなどをはめた湯殿には、板壁にかかった姿見が、うっすり昨夜ゆうべの湯気に曇っていた。お島はその前に立って、いびつなりに映る自分の顔に眺入ながめいっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
贄卓にへづくゑの上の色硝子いろガラスの窓から差し入る夕日が、昔の画家が童貞女の御告おつげの画にかくやうに、幅広く素直に中堂に落ちて、階段に敷いてある、色の褪めた絨緞を彩つてゐる。
駆落 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
机の前に頬杖ほおづえを突いて、色硝子いろガラス一輪挿いちりんざしをぱっとおお椿つばきの花の奥に、小野さんは、例によって自分の未来を覗いている。幾通りもある未来のなかで今日は一層出来がわるい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
タバコ屋の前まで来ると、私は色硝子いろガラスの輝く小窓から、チェリーを買った。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まさかあんな色の色硝子いろガラスでもあるまい。こん度通る時好く見ようと思う。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
地にゆだねたる石柱の頭と瓦石のたいとは高草の底に沒し、こゝかしこに色硝子いろガラスの斷片を留めたる尖弧ゴチツコ式の窓をば幅廣き葡萄の若葉物珍らしげにさし覗き、數丈の高さなる墻壁しやうへきの上には荊棘けいきよくむらがり生ぜり。
医者のチャックはどうしているでしょう? 哲学者のマッグも相変わらず七色なないろ色硝子いろガラスのランタアンの下に何か考えているかもしれません。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
格子をれて古代の色硝子いろガラスかすかなる日影がさし込んできらきらと反射する。やがて煙のごとき幕がいて空想の舞台がありありと見える。窓の内側うちがわは厚き戸帳とばりが垂れて昼もほの暗い。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
社長のゲエルは色硝子いろガラスの光に顔中紫に染まりながら、人なつこい笑顔えがおをして見せました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
欄間らんま色硝子いろガラス漆喰しつくひ塗りの壁へ緑色の日の光を映してゐる。板張りの床に散らかつたのはコンデンスド・ミルクの広告であらう。正面の柱には時計の下に大きい日暦ひごよみがかかつてゐる。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
マッグはいつも薄暗うすぐら部屋へや七色なないろ色硝子いろガラスのランタアンをともし、あしの高い机に向かいながら、厚い本ばかり読んでいるのです。僕はある時こういうマッグと河童の恋愛を論じ合いました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)