しゃ)” の例文
旧字:
城外の野に、軍幕テントをつらねて、朝夕、ひょうひょうの寒風にはためかれている一しゃの内に、宋江そうこうは今日しも、深い思案に沈んでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其椀それで粥を一ぱいに茶を三ばい引っかけると充分なもので、それから自分のしゃへ指して帰り道で、ゲ(ゲは徳を施すの意味)を貰うです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
しゃさけ出来栄できばえに、たちまち一部の册子そうしとなりぬ。そもこの話説はなしの初集二集は土竈どがまのパットせし事もなく。起炭おこりずみにぎやかなる場とてもあらねど後編は。駱駝炭らくだずみ立消たちぎえなく。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「これを文天祥ぶんてんしょう土窖どこくに比すればわがしゃはすなわち玉堂金屋なり、塵垢じんこうの爪につる蟻虱ぎしつの膚を侵すもいまだ我正気に敵するに足らず」と勇みつつ幽廬ゆうろの中に沈吟せし藤田東湖を思え
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
伊那丸以下いなまるいかのひとびとは、あのそうどうのあったばんから、御岳みたけの一しゃ謹慎きんしんして、神前しんぜんをけがしたつみしゃすために、かわるがわる垢離堂こりどうの前で水垢離みずごりをとった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黒衣を着こめば、おれ達悪党も、三しゃを避けるお燕ちゃんだが、女に返ると、やっぱり女だから妙なものだ。お燕ちゃん、下手に跳ぶと、お小姓袴の下から、水神様が拝めるぞ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、軍配ぐんばいをもって陣頭じんとうに立てば、孫呉そんごのおもかげをみるごとくであり、帷幕いばくに計略をめぐらせば、孔明こうめいも三しゃを避ける小幡民部が、太刀打たちうちが下手へただからといっても、けっしてなんの恥ではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)