“脱(の)” の例文
爺は、この黒い、白い雪の斑点(はんてん)の付いた昆布のように凍えた合羽を後方(うしろ)に取り脱(の)けると、女の背には、乳飲児が負(おわ)されていた。これを見た老婆は
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは赤外線も、吾々が赤を識別できると同様、アリアリと眼に映(うつ)るからだ。しかし彼女は危険を感じて、吾々の眼には見えない赤外線標的を撃つことから脱(の)がれた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
君はさっき何とか云ったね、そうそう、天変地異の起らぬ限り、俺は脱(の)がれられぬと云ったのだね。ところが、この俺にその天変地異を起す力がないと思っているのかね
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一刻も早く両刀を一手におさめて柄を脱(の)けたならば、必ずや、大の乾雲からは、割(わ)り文(ぶみ)の後片火説の紙が生まれ、小の坤竜は、前半水法のくだりを吐き出すに相違ない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
即ち僕の願はどうにかしてこの霜を叩(はた)き落さんことであります。どうにかしてこの古び果てた習慣(カストム)の圧力から脱(の)がれて、驚異の念を以てこの宇宙に俯仰介立(ふぎょうかいりつ)したいのです。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
士官(しくわん)水兵(すいへい)の勇(いさ)ましき働(はたら)きぶりは言(い)ふ迄(まで)もない。よし戰鬪員(せんとうゐん)にあらずとも如何(いか)でか手(て)を拱(こまぬ)いて居(を)らるべきぞと、濱島(はまじま)も、私(わたくし)も、重(おも)き上衣(うわぎ)を跳(は)ね脱(の)けて、彈丸(だんぐわん)硝藥(せうやく)を運(はこ)ぶに急(いそが)はしく。
千葉で栗栖との結婚談(ばなし)のあった時、妹の一人に養子を取りさえすれば、自分の籍はぬけるように聞いており、相続者の責任は早く脱(の)がれたいとは考えていたのだったが、そんな世間的のことは
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼奴は自から起した天変地異に隠れて、易々と警官の包囲を脱(の)がれたのです。ごらんなさい。この小さな白い押釦(おしぼたん)。これの一押しで、彼奴の所謂天変地異が起るのです。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
容易ならぬ漂気!——と見て、早くも二、三、せわしく刀の柄ぶくろを脱(の)けにかかる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「うん、出来るのだ。人造人間を使って、ここを脱(の)がれるんだ」
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)