聯隊れんたい)” の例文
このころ、この街にある聯隊れんたいの入口をめがけて旗や提灯ちょうちんの列が日夜激しくつめよせた。日露戦争がしだいに高潮して来ていたのである。
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
その夜のうちにフィリピンのマルチン爆撃機は、やみのバシー海峡を飛びこえて、わが台湾屏東へいとう飛行第八聯隊れんたいの根拠地を夜襲したのである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
さて新道が出来ると人力じんりきが通る。荷車は干魚ほしうをなどを積んで通る。郵便脚夫きやくふが走る。後には乗合馬車のりあひばしやが通り、新発田しばたの第十六聯隊れんたいも通つた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
歩兵一聯隊れんたいの起床ラッパを、赤坂檜町の旧居で聴いている錯覚をおこしていたが、近くで猫が、咽喉のどを鳴らしている気もした。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
きりふかい六ぐわつよるだつた。丁度ちやうどはら出張演習しゆつちやうえんしふ途上とじやうのことで、ながい四れつ縱隊じうたいつくつた我我われわれのA歩兵ほへい聯隊れんたいはC街道かいだうきたきたへと行進かうしんしてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
この話は本年の春尼港にこうから帰った某聯隊れんたいの将校から聞いた話であるが、それ以後のクラネクの消息は判らなかった。
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
麻布あざぶ聯隊れんたいより立派でない。大通りも見た。神楽坂かぐらざかを半分に狭くしたぐらいな道幅みちはば町並まちなみはあれより落ちる。二十五万石の城下だって高の知れたものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雪はそりや靴に踏みつけられて、固く凍っている。そこへ行くまでに、聯隊れんたいの鉄条網が張りめぐらされてあった。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
与一が、山の聯隊れんたいへ出発した日は、空気が灰色になるほど風が激しかった。「まるで春のようだ、気持ちの悪い風だ」誰もそういいながら停車場に集った。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
然しホテルの建っている場所から、谷を隔てた処に在る第×聯隊れんたいのモダン営舎だけは、支那事変のための夜間訓練でもあるか、まだ灯火が美しくきらめいていた。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
聯隊れんたいの敷地を越えて、はるか生駒いこま連山のすそにいたるまで、西南にのびた大和国原やまとくにはらをしのぶ方がいい。或は春日山のふもと近くをめぐって、白毫寺びゃくごうじへ行く道筋も美しい。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
古びた手帳をると、明治廿二にじゅうに年の秋、私は東北のある聯隊れんたいに軍曹をして奉職していたことがあった。丁度ちょうどその年自分は教導団を卒業した、まだうら若い青年であった。
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
ソフィヤ・リヴォヴナの父親は軍医で、一時ヤアギチ大佐と同じ聯隊れんたいに勤務していたことがあった。
麻布竜土町あざぶりゅうどちょうの、今歩兵第三聯隊れんたいの兵営になっている地所の南隣で、三河国奥殿みかわのくにおくとのの領主松平左七郎乗羨のりのぶと云う大名のやしきうちに、大工が這入はいって小さい明家あきやを修復している。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
僕らの中学は秋になると、発火演習を行なったばかりか、東京のある聯隊れんたいの機動演習にも参加したものである。体操の教官——ある陸軍大尉はいつも僕らには厳然としていた。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
女達が私に身をまかせるとき、彼女達の感受性から海豚イルカの粘々した動物性をうける。ときによると塹壕ざんごうから掘出した女聯隊れんたいの隊長の肢体を。もと/\我々が地理と科学の発生を埋葬する。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
鉄道聯隊れんたいの兵隊さんを指導することになった。私には本当に久し振りであった。
出動部隊は近衛このえ師団、第一師団のほか、地方の七こ師団以下合計九こ師団の歩兵聯隊れんたいにくわえて、騎兵、重砲兵、鉄道等の各聯隊、飛行隊の外、ほとんど全国の工兵大隊とで、総員五万一千
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
外にお化けの一聯隊れんたいでも呼びたくなるのは尤もであるが、古い腐った蜘蛛くもの巣みたいなものがネットリからみ合った男と女を一堂に集めて、その陰鬱陰惨なつながり、からみ合い、思っても不快
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
砲車が泥濘の中に陥って少しも動かぬのを押して押して押し通した。第三聯隊れんたいの砲車が先に出て陣地を占領してしまわなければ明日の戦いはできなかったのだ。そして終夜働いて、翌日はあの戦争。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「第百二十八聯隊れんたいの伝令!」
朝に就ての童話的構図 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
あんな煩瑣はんさな規則のうちに雅味があるなら、麻布あざぶ聯隊れんたいのなかは雅味で鼻がつかえるだろう。廻れ右、前への連中はことごとく大茶人でなくてはならぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翌日あたりから、石田も役所へ出掛に、師団長、旅団長、師団の参謀長、歩兵の聯隊れんたい長、それから都督と都督部参謀長との宅位に名刺を出して、それで暑中見舞を済ませた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
赤坂の聯隊れんたいが近いのだということで、会社へ着くころには、いつも喇叭らっぱが鳴りひびいている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
現在の南大門前の田畑及び旧聯隊れんたいの敷地はおおむね当時寺域の一部であったといわれる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
その聯隊れんたいの秋季機動演習は、会津あいづ若松わかまつ近傍きんぼうで、師団演習を終えて、のち、我聯隊れんたいはその地で同旅団の新発田しばたの歩兵十六聯隊れんたいと分れて、若松から喜多方きたかたを経て、大塩峠おおしおとうげを越え、磐梯山ばんだいさん後方うしろにして
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
そして、前よりも二倍位い大股に、聯隊れんたいへとんで帰った。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「来た。来た。お前はどこの聯隊れんたいだ?」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だい百二十八聯隊れんたい伝令でんれい!」
ありときのこ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「十八聯隊れんたいの兵だナ」
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)